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[コメント] ペイルライダー(1985/米)

極端な強さは物語そのものを崩しかねない。そこを是とするか非とするかで評価は分かれると思います。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 イーストウッドが『荒野のストレンジャー』に続き、自身のライフワークとも言える西部劇を自身を主人公として作り上げた作品。

 この作品の特徴は単純明快なストーリー運びと、寡黙な主人公という、マカロニウエスタンをそのまま継承したような作風で、純粋にアクションを楽しむことが出来る作品。  ただ、この作品が作られたのが1985年というのが面白い。これが10年前でも…いや20年前だったとしても全く同じストーリー運びで作ってなんの不思議もない作品に仕上がっている。こんな年代にこんな懐古趣味な作品が作られる事自体が一種の奇跡的な出来事かも知れない。

 しかし、流石に時代は移り変わっている。物語自体は古くさくとも、演出やキャラの映し方には格段の進歩が見られ、イーストウッドの孤独なヒーロー像がますます映えた作品に仕上がった。実際イーストウッドは監督としても並々ならぬ実力を持っていることは本作を観るだけでも充分分かろうというもの。

 悪を倒すのは善ではなく、それ以上の悪なのだ。と言う、マカロニを通して出されたテーゼが丁寧に描かれているのが特徴(神話的モティーフを用いるこの手法はレオーネ監督が好んで使っていたもので、その直弟子であるイーストウッドもよく使っている)。主人公は聖書に書かれた「青白い馬」に乗って現れる悪のヒーローを素で演じきっていた(牧師であるにもかかわらずね)。

 ただ、演出は良くとも、元となった物語自体がちょっとパターンに陥りすぎの上に(物語自体が主人公の性格除けば『シェーン』(1953)そのまんまだが、肝心なタメがない)、イーストウッドの強さが極端すぎた。大体弾ごめの必要な拳銃でライフル持った敵をばったばったなぎ倒すのは無理があるだろう。それに主人公が何を考えてるのか全く分からないのも辛い(以降のイーストウッド作品はその辺が上手くなっていくのだが)。

(評価:★3)

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