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[コメント] 深い河(1995/日)

質そのものは悪くないと思う。が、秋吉久美子の“私を見て。私だけを見てちょうだい”と言うオーラが画面から漂ってきてるようで、それが乗り切れない気持ちとして残った。原作ファンの繰り言。
甘崎庵

 小説における良質の文学作品は映画になりやすい。原作のファンを取り込めると同時に、それが深く考えさせられる作品であれば、映画の中に哲学性を取り込むことが出来、映画自体の質を向上させることが出来るから。それだけに傑作と呼べる作品も多い。

 だが一方、小説というのは多種多様な読み方が出来るのに対し、映画と言うのはその一部分を切り取って、一つの価値観だけを強調することになりかねず、それだけに監督の力量が問われるものでもある。間違うことなく、映画というのは監督の思いが前面に出るものなのだから。いくら一般に評価されていても、原作の熱烈なファンからしたら、「屑作品」と称されてしまうものも多々ある。特に多種な解釈が可能で、自分なりの解釈が出来ている文学作品だったらなおさら。

 で、この映画だが、原作の熱烈なファンとしては、やはり成功したとは言い難い。原作は久美子と大津の関係を主軸として様々な人間模様が錯綜した作品で、本作もそれを踏襲しているが、本来有機的につながっているはずのこの二人以外の物語が単なる小編の挿入にしかなってなかった。これだったらいっそのこと切った方が良かっただろうし、キャパにあこがれるあのカメラマン役、沖田浩之の存在が浮きまくっていたのも残念。

 秋吉久美子奥田瑛二は共に良い俳優で、特に映画に映える役者だと思うが、やはり大学時代から中年にさしかかる今の時代までを全て演じきるのは無理があったよな。

(評価:★3)

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