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[コメント] ダイヤルMを廻せ!(1954/米)

ヒッチコック監督の実験…
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 映画に限らないが、物語の進行というのは二つの流れがある(念のため。これは私のオリジナルではなく単なる受け売り)。

 一つはストーリー。これは物語の時間軸を作り上げている。いわば物語の全体の説明を形作るもの。もう一つはドラマ。映画としてはこっちがむしろ重要で、映画では主要な部分を形成する。

 この二つの違いは時間の流れという形で捉えることが出来る。まずストーリーパートは時間の流れが速い。たとえて言うなら、一つの場面からもう一つの場面への移動に道路を歩いているとか、乗り物に乗ってるキャラクターを描写するようなものだ。これで移動してる課程が観ている側に伝えられる。これを間に置くことによって、次の場面がたとえば数時間後になったとしても、観てる側は納得する。

 もう一方のドラマパートだが、これは現実の流れに即するが、その中でキャラクターの内的心理状況や、あるいは複数の立場からの描写がなされるために、現実に流れる時間よりむしろ遅れるのが特徴。

 映画にはこのバランスが結構重要となる。

 …なんでこんな事を書いたかと言うと、ヒッチコック作品にはいくつも実験的な試みがされているものが多いのだが、それが本作でも行われているように感じたから。

 私は本作の最大特徴は上記のストーリーパートを(極力)無くしてしまった事にあると見ている。

 本作には大きくいくつかのパートに分け、ドラマが展開されるが、それをつなぐストーリー部分が殆ど描写されない。まるで瞬間移動のようにドラマからドラマへの展開がなされている。ドラマとドラマをつなぐものが無いのだ(そう言う意味では本作は舞台劇に近い)。居間でトニーとマーゴ、マークの三人が話していたと思うと、次の瞬間には同じ居間で、トニーとレスゲートが喋っている。そして次の瞬間にはトニーとマーゴが外出について話している。と言う具合に。

 このストーリーの削除は本当に実験的なものだと思う。だってあんまり意味を持って見えないし(笑)。でも、それを無くしても物語を複雑にせずに、時間の経過は分かるものだ。と言う事を主張してるように思える。

 それに実際それは成功してる。ちゃんと物語の時間の経過が観ているこっちには分かるし、何気なく観ている分には、そのストーリーパートが無いこと自体に気づかないかも知れない(せいぜい場面がえらく変わるなと言う程度の認識で終わってしまうだろう)。

 …実は私自身も初見ではまるで気づかなかった。このレビュー書く前に本作について色々考えてる内に、不自然な裁判のシーンが妙に引っかかり、何故こんなのを入れたんだろう?と考えていたら、不意に思いついただけ(笑)。普通の作品だったらあんな裁判シーンは入れない。新聞の見出しを使うとか言う方法が主に用いられる(この場合、ストーリーパートになるからね)。これなかったら、こんな事考えなかったよ。

 物語に関しては、やっぱりサスペンスのヒッチコック!推理小説のような謎解きの課程をだれることなくしっかり描いていたし、意外さもあった。何より先にリメイクの『ダイヤルM』(1998)を観ていたにも関わらず、ストーリーの意外さを楽しむことが出来た(と言うより、リメイクが酷すぎたと言うべきなのか?)。ケリーの首が絞められる時の表情も良い(笑)。殺人のシーンのはずなのに、なんだかとても色っぽい描写がされていた。

 なんでも本作は元々立体映画として作られたそうだが、結局はフラット版で公開されたそうだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] tredair[*]

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