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[コメント] タスマニア物語(1990/日)

作る映画がバブルなだけではない。という意地で作った作品。で、出来たのがとってもバブリーな話。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
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 1980年代とは日本はまさにバブル時代。それと時を同じくして邦画は不振に陥っていった。この時代に売れた映画というのは、アイドル映画か、強力なメディアミックスで展開した娯楽大作、そしてアニメーションか動物ものくらい。映画自体もバブル的な捉えられ方がされて、ナンセンスとノリと可愛らしさだけでで突っ走る作品が量産された(そう言うものを求めたこちら側観客の責任もあるが)。その中でも低予算で真面目なものももちろん作り続けられたが、なんせこの世の春を謳歌する時代にあってのこと。真面目に作った作品は「暗い」と言われて切られてしまう。観客はより派手さを求めハリウッド大作に向かう一方。この時代は“巨匠”と呼ばれる監督たちさえも精気に欠け、本当に語るべき邦画が少ない…この当時にデビューした監督たちは本当に苦労しただろうと思う。

 そんなバブル時代は1990年には終わっていたが、円高の影響もあって、メディアの方は1992年頃まで浮かれ続けていた。そんな時代に作られたのが本作。フジテレビが総力を挙げて作られた本作は、決してバブルに浮かれているだけではない。という意地を見せるようにエコロジーと親子の絆を主軸に話が展開。骨太物語と、タスマニアと言う楽園的南の国を舞台にして雄大な自然も見せようと言う、バランスの取れた作品を目指した作品だった…

 …の、だろうと勝手に考えている。少なくともその組み合わせだと確かに魅力はある。  そう言う作品を作ろうと言う姿勢はうなずけるのだが、出来た作品はとにかくものすごくちぐはぐなものに仕上がってしまった。

 バブルが抜けてない浮かれ騒ぎ。決してうまいとは言いがたい話題だけの役者陣。金かけてる割にチープな舞台描写。『北の国から』からそのまんま持ってきたような設定。行き当たりばったりな物語展開…しなければならない連絡を見事に全部怠り、そのためだけに危機に陥る面々とか、無理矢理ねじ込んだ小さな恋物語など、見事なほどに物語と合わないものばかり。軽薄な内容にそぐわない久石譲の重厚な音楽。そしてあれだけ引っ張っておいてに感動的なはずのタスマニアタイガーとの出会いが、いかにも間に合わせで爆笑シーンにしかならない。など、あらゆる意味ではずしまくり、金だけかかったしょぼい話に仕上がってしまった。タスマニアのオールロケだって、撮影よりも旅行の方がメインだったんじゃないの?と思いたくなるほどのやっつけ仕事に見える。金をふんだんに遣って浮かれた姿で押し付けられる自然保護の話になんの魅力があろう?

 降旗監督にとっても本作は汚点だろう。

 まあ強いて本作の魅力を語るなら、「これがバブル時代だ」という教材に使えること位か?その当時を知っている人だったら、笑い話として観ることも出来るだろうし、こんな狂乱な金遣いを自戒も出来るかも。

(評価:★1)

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