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[コメント] めまい(1958/米)

二度観る必要がありました。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 本作を観たのは随分と昔。中学生ぐらいだったかと思う。

 その時の感想は、はっきり言ってよく分からなかった。少なくとも途中までは神秘的な話だと思って観ていたら、なんか後半でいきなり失速…なんだなんだ?と思ってる内に話が終わってしまった。

 それで長いこと本作は駄目作品かと思っていたのだが、後年これは私の大きな間違いだと気づく。というか、最近になって観直して、「あ、なるほど」と思った位。

 何故昔これを面白くないと思ったのかはよく分かった。一つには物語がヒッチコックらしくなく、メリハリが無さ過ぎたこと。特に前半部と後半部でのタッチの違いが物語を分断してしまったようにしか見えない。そう言えば観てる間眠くなったのはこういう事か。と気づく。実は今観てもテンポの遅さを感じるくらいだから。ミステリーとしては脚本の甘さもどうしても感じられてしまう。あんな穴だらけの計画と偶然性で物語が作られてると、やっぱり興醒めだよ…フランス人が描いたミステリーというのは大抵そう言う部分があるもんだけど。

 それと当時はキャラクタに感情移入できなかったのが痛い。スチュワートは結局一人の女性と自分の高所恐怖症にウジウジしっぱなしで魅力が感じられず、妙に苛々させられた。それに当時はノヴァクを綺麗とも思ってなかったし。それで今観てみると…ああ、ノヴァク綺麗だなあ(笑)。綺麗というか、もの凄くミステリアスな雰囲気を身につけてる。どのように女性をミステリアスに描くか。ヒッチコックは見事にそれを果たしていたんだな。

 ただ、映画も数観た後で改めて本作を観ると、急激に評価が上がってしまった。

 本作は二度観ることが重要だと思う。

 最初は単に「ノヴァク、綺麗だなあ」。とか、「こんなプロットか」と観ることで終わるけど、二度目観る時は、むしろ演出部分に特化して観て欲しい。

 まるで舐めるようにねっとりとノヴァクを映し出すカメラ・ワーク。後年のサイケデリック映像に一脈通じるアニメーションの使い方、逆ズーム・ショットの見事さ。色彩感覚の突飛さ。はっきり言ってこれほど凄い映像をこの時代に作り上げたヒッチコックの凄さを感じる事が出来るはずだ。

 要するに本作はヒッチコックの一面、つまりサスペンス作家として観るだけでは足りないのだ。そうではなくもう一つの一面、映像作家としてのヒッチコックを観るべき作品と言えよう。

(評価:★4)

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