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[コメント] ソドムの市(1975/仏=伊)

「胸にぐっと来る映画」という言葉は通常は褒め言葉ですが、本作に限ってそれは当てはまりません。自信を持って言えます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 原作はサド侯爵の「ソドムの120日」。舞台を大戦下のイタリアに移して描いた天下の奇劇!未だ私は原作を読む機会を得てないが(何冊かは読んでるんだけど)、かつて友人から「こいつは私の観た映画のなかで一番気持ち悪かった」と脅され、それ以来どうしてもこのタイトルが頭から離れなかった。怖いもの見たさもあったけど、いつかは観てみたいと思っていた訳だが、一年ほど前、レンタルビデオ店で偶然発見…借りる勇気を持つまで一年の時間を必要とした。

 更にその友人から「これを観る前にカレーの食い納めをしろ」との助言を受け、素直にそれに従ってからの鑑賞。

 冷静に観るならば、本作はファシズムというものに対して冷笑する作品だって事なんだろうが(でもファシズムって、逆に不道徳さを排除する政党だったはずなんだが)、そのテーマは生かしきれてなかったようには思える。いくら退廃の極みとは言っても、テーマ以上に異常性を出してしまっては…いや、そもそもそんなものテーマでさえ無かったのかも知れない。要は観客に気持ち悪がらせるのが最大の目的だったのかも。そうだとすれば、間違いなくその目的は果たしたことだと思われる。たとえ単純に私に読み解く力が無かったとしても、それを残念に思いたくもない。

 …マジで気持ち悪いんだもん。

 そりゃまあ、現代では男同士の(濃厚な)キスシーンも映画表現で許されてたり、AVなんかではそう言うのも結構あるらしい。表現で言ったら、もっとドギツイのもあるんだろう。

 でも、これは映画だ。ちゃんと筋もあって、演出もしっかりなされている上でこういう表現をやられると、やっぱり酷い。絶対これは確信犯の演出だ。

 なんと言っても中盤の糞尿地獄のシーンはあまりと言えばあまりだろ。暗喩でもなんでもなく、実際にあんなもん喰わせるシーン見せるなんて…私には実際に食べるシーンよりおまるの中にあるものとか、お盆にてんこ盛りになってるのとかの方がグエッとなったけどね。

 ラストも救い無し。あの後は勿論奴らは全員殺されることになるんだろうけど、そこに至らず終わってしまうラストは、極めて後味悪し。

 …覚悟はしてたけど、やっぱりその後腹の調子がおかしくなってしまった…それに、友人の言葉通り、しばらくカレーを食べたいとは思えない。いや、食べられるとは思うけど、思い出してしまうのではないか?と考えると、ちょっと怖い(笑)

 今まで観た作品のなかでは学生時代にチキンレースで焼き肉食べながら観た『ネクロマンティック』(1987)とか、知らないで食事時に観てしまった『イレイザーヘッド』(1981)に匹敵する作品には違いない(多少なり前知識があってまだ良かった)。

(評価:★2)

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