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[コメント] 刑事ジョン・ブック 目撃者(1985/米)

秀でた部分を最も効果的に用いた好作。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 単純な刑事物として、推理作品、アクション作品としてだけ見るならば、本作は並な出来に過ぎない。メインの設定自体がありきたりだし、真実に関しても実も蓋もない。ほとんど活劇シーンもない。このままでは凡作、あるいは駄作と烙印を押されても仕方が無いのだが、紛れもなく名作と言われる。

 それにはちゃんと理由がある。この作品の真価はそんなところにはなく、本当に強力な強味があるのだから。

 それは、これまでドキュメンタリー以外の映画にほとんど登場することがなかったアーミッシュが舞台であること。この特殊な地域の生活を丁寧に描いたことが高評価につながった。

 たった一つ、秀でたところがあるだけで、これだけ作品に深みが増すのかという好例となった。

 私もよくは知らないのだが、アーミッシュというのを調べてみると、ドイツ系移民の一部で敬虔なキリスト教徒が、自分達の共同体を、移民時代のままの生活に固定して生きているのだそうだ。電気すら使用せず、基本自給自足で全てをまかなうというもので、非暴力主義を貫く。こう言う生活にも一種の憧れを持ちつつ、多分あっという間に飽きてしまうだろうという思いも持つ。

 そんな特殊な空間にカメラを入れているが、それを決して否定的には描かず、一般市民とは違っているものの、この土地ならではの人とのつながりの良さとか、非暴力の力とか、そう言ったところをしっかり描いていくのが良かったのだろう。

 お陰で物語自体は殺伐としているのに、なんだかほんわかした空気を楽しめるように出来ているし、いい意味で自分の知らない世界を垣間見せてくれる、一種のドキュメンタリーとしても観られて知識も増す。教材としてはかなり優れた作品でもあった。

 幅広い世代にお薦めできる良質作品である。

(評価:★3)

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