[コメント] ナッシュビル(1975/米)
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群像劇に定評があるアルトマン監督だが、その評価を初めてものにしたのが本作。複数の登場人物の複雑な人間関係を時に笑い、時に追い込み、時に暴力的にもさせつつ、世相を笑うというアルトマン流の映画作りを確立させた。
本作の場合は、製作された1975年という世相が本当によく現れている感じ。アメリカ人にとっての演歌とも言えるC&Wの大会であっても、それが変わらないわけではなく、出場者の中にはいかにもヒッピー的な人間もいれば、ロッカーもいる。国家に対する反対を表明している人間もいれば、逆に国を利用してのし上がろうとする人間もいると言った具合で、様々な立場で参加しているのだが、その背後には丁度この時代に起こったウォーターゲート事件で混乱中のアメリカという国が見えてくるようだし、ここでのごった混ぜの人間同士のいがみ合いは、結局アメリカの“今”を映し出そうとしてのことなのだろう。
しかし、その混乱の中にも個々の人間それぞれにドラマがあり、そのドラマが連鎖していくことによって、一見まとまりのない構成が、きちんと終幕に向けて疾走していく。自分の外面の良さに辟易しているハミルトンとか、雰囲気が全く分からないので空気を読まずに突入しては痛い思いに遭い、それでも突入していく姿。それぞれの裏切りと愛情。そう言った混乱が渾然一体となっていくうちに、一つ一つの物語が緩やかにつながっていき、クライマックスでの感動へと移っていく。
イベントとかやってると本当にそう言う気分になることがある。疲れの中で、「心が一つになった」という気分。歌で本当に人を変えることが出来る。という思い。山のように出てくる目先の問題をこなしていくうちに、不意に与えられた静寂。 そう言ったものを見事に切り取って与えてくれたのが本作だった。
本作で培った技術を使ってアルトマンはこれからも群像劇を作り続けていくが、その基本となり、完成度が高いのが本作だったと言えるだろう。
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