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[コメント] パーフェクト・ストーム(2000/米)

一番大切な、この映画の心臓とも言える部分で思い切り外してくれたこの映画。この気持ち、どうしてくれる?ペーターゼン監督作品は好きなんだけど、これはいただけない。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 物語は三つに分かれる。前半の港町での人間関係のシーン。中盤の漁のシーン。そして後半の「パーフェクト・ストーム」のシーン。タイトルにもあるように、後半部分が一番の見所。

 前半部はどっちかというとイギリス映画みたいで、プラクティカル・ライティングが多用され、寂れた感じの港町が上手く描写されていた。こういう撮り方は私は凄く好き。やや人間関係が分かりやすすぎで、暗さがちょっと足りないかな?と言うところはあったけど、キャラクタの数の割に時間がないから仕方ないか。と言うところ。

 それで中盤。漁船という限られた空間で人間関係が展開され、その中で起こる事故、不審や友情の再確認などが出てくる。ここでのクルーニーの専制ぶりは海の男の決断力が垣間見えるようで、これも良し。どっちかというと舞台的な盛り上げの仕方は、これはこれで好き。

 ここまででまあ、一粒で二度おいしい映画と言う感触を受けた。前半、中盤どちらももう少し深く突っ込んだらもっと面白くなっただろうけど。

  そして後半。嵐に揉まれるシーン。ここまでで充分なほどに期待が高められ、来るぞ来るぞ、と思わしておいてのカタルシス。手慣れた手法とは言え、その分すんなりと入って行けた。勿論ここからがこの映画の本質である。

 で、その嵐のシーンだが…

 ここまでにこれほど期待を高めておいて、あれかい!

 ちょっと待てよ。何?これ?状況説明どころか前半中盤を通して培ってきた男達の繋がりも猛嵐の前に霧散し、ただ絶叫だけが響き渡る。しかも間が取れないためか、他の船とか、二重遭難した救援隊の話とかを勝手に挿入し、まとまりが全然なくなってる。

 特撮技術を見せたいのは分かる。必死になって助かろうとしている男達の表情を見せたいのも分かる。だけど、そこにあるはずの「ドラマ」がすっぱりと抜けている。いや、ドラマはあるんだけど、全部小粒。状況がぽんぽん飛ぶため、感情移入する暇もない。ただパニックを起こし右往左往している男達がそこにはいるだけ。

 そして最後。結局主人公の船は全滅して終わるのだが、あの終わり方も変?大体全員死亡してるなら、何のために一人だけ逃げ出すような描写をするんだ?それを感動的に見せようとする辺り、醒めきった目には馬鹿にしか映らない。

 これは実話を元にした作品だと言うが、全員死亡した船の乗組員のどこが「実話」なんだ?これは思い切って変えねばならなかった部分だぞ。パターンと分かり切っていたとしても、最後にみんなで方を叩き合って笑って欲しかった。

 パニック映画だったらパニック映画らしくして欲しい。中途半端にも程がある。特に前半中盤の出来が好みだっただけに憤然とした。

 あと、くだらないことなのだが、ちょっと気になったシーン。水中でクルーニーが一人逃がしておいて、自分だけ船に残る所があるが、あれは明らかに合成。だって、クルーニー、全然浮力がかかってない。地上で窓から顔を出して引っ込めただけにしか見えないのが何とも…

(評価:★2)

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