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[コメント] 野いちご(1957/スウェーデン)

ベルイマンはこの当時はまだ40前の、“若い”監督であり、一方シェストレムは当時78歳。二人が代表する「過去」と「現在」のスウェーデン映画を見せる作りになっています。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 映画とは過去を映し出す鏡であり、夢でもある。スウェーデン映画の過去と現在。あたかも本作はそれを思わせるかのように物語も展開していく。

 ここで登場するイサクは、外面的には功上げ名をなした人物として描かれるが、冒頭から常に不機嫌なまま。その不機嫌さはどこから来ているのか。と言うのが話が進むに従って明らかになっていく。

 彼はさまざまなビジョンを観る。それは時として過去に捨てた女性の姿であったり、妻の不貞であったり、そして今、息子の嫁から聞かされている現在の自分の姿であったり。それらは全て後悔という姿を取っているのだが、不幸に浸ろうとする自分を周囲が許しておかない。そりゃそうだ。過去を観ようにも、現在の時計は動き続けているのだから。  しかし一方過去は甘美である一方、否応なしに自分を責め苛む。それを打破するのもやはり現実である。

 現実に目を向けることが一番難しいかも知れない。だけど現実は自分をしっかり引き戻してくれる。

 ここでイサクはしばらく過去の旅をしてきたが、過去を旅することで改めて自分自身を受け入れる事が出来、最後は現実にきちんと着陸している。まさにこれこそロードムービーの基本だろう。ラストが下手にラストを感傷的でないことも、これからまだ人生は続くことを思わせてくれる。

(評価:★4)

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