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[コメント] 妻よ薔薇のやうに(1935/日)

男として、観てて辛いです。それが成瀬作品の醍醐味とは分かってるのですが…
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 戯曲『二人妻』の映画化。

 成瀬監督は当初あまり日本映画界ではあまり重く見られておらず、独自のスタイルをうち出すようになってから映画界に認められたのだが、その分水嶺的な働きをしたのが本作で、監督はこれでキネマ旬報ベストワンとなり、晴れて一流監督の仲間入りを果たす事となった。確かに良作だし、意欲作でもある。映画に倫理が求められていた時代に愛人を出し、しかもその愛人というのが本当にかいがいしく、暖かい女性だったというのは、かなり冒険色が強く感じられる。

 それに監督が得意とする優柔不断な男が中心となる話で、既にこの時代に自分なりのスタイルを作り出しているのが特徴だが、実は私が成瀬監督作品をどうしても好きになれないのが、実はこの点。監督の創造した男連中はみんないい加減で、プライドだけ高く勝手なくせにその責任を取ろうとしない人間ばかり。本作でも結論は最後まで出ることなく、それまでの状況が続く。で終わってる。こう言うのがどうにも苦手な私としては相当にストレスが溜まる(と言いつつ、結構な数観てるのはちょっと矛盾だが)。  逆に女性の強さを描くとなると、この監督の独壇場。しかもその強さというのが、アメリカナイズされた意味ではなく、あくまで日本的な意味で、どんなに男がいい加減でも、それを包み込もうとする、日本的な女性像が描かれている。

 本作の場合、その“妻”の役割を果たすのが愛人である点がユニークだが、男にとって、幸せって何だろう?と考えさせられる。結局の話、ここに出てくる俊作は、どこに行こうとも異邦人のままであり、居心地の良い場所なんてどこにもない。だから荒れるしかない。これが辛いんだよな。観てる側としても辛い。

 …別段、私がそう言う人間だからと言う訳ではない…無いと思う。多分。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)田原木 セント[*]

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