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[コメント] アメリカン・サイコ(2000/米)

ここでのベイル観てると、『ダークナイト』でバットマンじゃなくてジョーカーだって出来そう。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 この作品に登場するのはいわゆるヤッピーと呼ばれる男達。目先の利く彼らは主にプランナーとして雇われ、会社に莫大な利益をもたらし、若くしてトップに上り詰める人達も存在した。

 彼らは自分たちが選ばれた人間であることを自覚しており、トップにいても常に高みを目指さねばならないジレンマに陥ることになる。ここでの彼らの生活にそれはよく現れているだろう。彼らは完璧な容姿を保つため、自分自身の生活では徹底的な節制を行い、トレーニングやコスメに余念がない。人と会うときも“完璧な自分”を徹底して演出していかねばならない。時に金に糸目を付けない派手すぎる遊びもするが、それさえも、許されたほんの一握りの人だけが出来る遊びになる。

 日本のバブル期と歩調を同じくしながら、意識の差にこれだけ開きがあるのは、欧米では伝統的に人の上に立つ人間は自らを律しなければならないという、いわゆるエリートの意識が強いからだと言われる。エリートの概念がない日本は、金を持つと成金になってしまうのがその辺の違いかも。

 …とはいえ、そんな生活が羨ましいか?と問われると、全くそんな風には思わない。というか、こんな自縄自縛に陥る窮屈な生活してたら多分私の気がおかしくなる。特にここで登場する若者達は、みんな立場的には同じだが、心の中で目の前の人間の破滅を願いつつ、表面的には親友のふりをしなければならないし、人間関係を崩さないために細心の注意を払わねばならない。自分の悪口を言われたくなければ、どんな些細な会でも出席し、愛嬌を振りまかねばならない…書いてるだけで気持ち悪くなりそうな生活を送っている。  そんなんでおかしくならないはずはないだろう。むしろここでのパトリックはまだ正常な精神を持っていたのだと思うぞ。表面的にはなんとか今までに踏みとどまっていても、心がどんどん崩壊していく過程を丁寧に描いているのにはかなり好感度高い。

 描写で言っても、恐ろしいほどに殺人シーンに現実味がない。ほとんど前触れ無しに人を殺し、その後、当たり前のように作り物の生活に戻っていくシーンは、観ていて溜息が出るほどだし、そして後半のあの大どんでん返しには参った。

 そもそも私は悪夢映画が大好きなのだが、よもやそっち方面に持っていってくれるとは。それまでは単なるモノマニアっぽい作品として思っていたけど、まさかこれが本当に悪夢映画でありつつ、しっかりどんでん返しの映画であったというのが嬉しい。中盤以降これは間違いなく私のような人間のために作られた映画であることを自覚し、凄く楽しみながら観ることが出来た。ラストシーンにもう一ひねりあったら完璧だったのだが、そこだけが残念。

(評価:★4)

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