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[コメント] 天国の門(1981/米)

画面は確かに綺麗。でも、それが本当に上手く機能していたのかどうかは別物で無駄な凝り方としか思えません。盛り上がる部分で退屈するというのは根本的な問題では?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 先に定住していたアングロ系アメリカ人がロシア、東欧系移民を迫害し、虐殺した西部開拓史上最悪のジョンソン郡戦争を描く。これによってアメリカの恥部を描いたとマスコミにもたたかれてしまい、アメリカでの売上は散々回収率最低の映画(3600万ドルの巨費をかけ、一週間でうち切られて回収できたのは150万ドル。負債を抱えたユナイテッド・アーティスツはMGMに吸収合併されてしまう)。

 かつて『ディア・ハンター』(1978)に私は特に何も感じなかったと言うことを書いたが、そのチミノ監督の次回作が本作。映画人によって作られ、長い歴史を持つが、1970年代の風潮に乗り切れずに屋台骨が傾きかけていたUAも『ディア・ハンター』の夢、再び。とばかりにチミノ監督を起用に至った。だが、多大な期待と資金をもらったチミノ監督は、絶対に売れないような企画を徹底的に金をかけて作ってしまった。これはこれで大変貴重な人物だと思うのだが、正味本当に退屈な作品だった。特に冒頭部分の卒業式風景は延々と続き、しかも中身が無いため、これだけでほとんどもう駄目(とはいえ、あれでも半分くらいに短くしたのだとか)。以降の話も、ほとんどが会話で成り立っているため全然盛り上がらず。何人かアジってる奴がいて、ちょっとだけ濡れ場があって、最後に押しくらまんじゅうして終わり…はっきり言ってそうとしか見えず、全然感情移入出来ず。

 過剰な演出を避け、リアリティを出そうとしたのかも知れないけど、殊本作についてはそれは逆効果としか思えず。3時間弱がこんなに長いと思った映画は珍しいほど。それでも日本では比較的好評を持って受け入れらため、監督は日本びいきになったとか。

 3時間でも長すぎるけど、実はオリジナルでは5時間を超えていたそうで、それでもカットにカットを重ねて225分に、そこからUA社は148分に短縮する(そのカット問題で裁判沙汰にまでなったそうだ)。

 ここでのチミノ監督の凝りようは尋常ではなく、衣装に化学繊維を使用することを拒否し、全て手縫いで作らせ、小道具は本物を集める。しかもロケ地に鉄道を敷き、当時の本物の機関車を運ばせる。映画の中で登場人物が吸う葉巻や煙草の銘柄まで指定し、食事のシーンでは料理の素材から調理法まで再現しようとしたとか。凝りに凝った作品ではあったのだな。

(評価:★2)

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