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[コメント] キングコングの逆襲(1967/日)

本作は徹底してグローバリズムを念頭に置いた作品です。日米の特撮作品にあって、かなり重要な位置づけにあると思います。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 『キングコング対ゴジラ』(1962)に続いてのキングコングを前面に押し出した作品となるが、ここに出てくる『逆襲』とはいったい何を示しているんだろう?大きさが違うので、『キングコング対ゴジラ』の続編というわけではないし、単にタイトルだけか?と思ったのだが、ここに出てくる設定やキャストを見ていると、本作は最初から海外向けを念頭に置いて作られた作品だと分かる。この『逆襲』とは、おそらく『キング・コング』(1933)の正統な続編だというスタッフの気概にあふれて作られたのではないか?とも思える。

 実際キャストを見ても、数多い外国人俳優が用いられているし、同年に『007は二度死ぬ』(1967)でボンド・ガールを演じた浜美枝までもが登場する(悪役だけど)。更にラストのメカニがスーザンひっつかんで東京タワーに上るあたり、ほんとに狙ったって感じだ(事実アメリカでのTV放映では本作は好んで使用されたらしく、知名度も高いらしい)。サイズを敢えてゴジラサイズからスケールダウンさせたのも、その辺が狙いなんじゃなかろうか?

 本作は特撮を見ても充分見応えのある作品だが(コングであれメカニであれ、尻尾を持たない人間に近い体型だから、二つがぶつかるシーンはプロレス的な面白さもあるし、冒頭のゴロザウルスとキングコングのとっくみあいは、後のウルトラシリーズに継承された気持ちの良さを見せてる)、本作の見所はむしろ人間側の方にあったように思える。

 日本映画において数々の作品で印象深いバイ・プレイヤーぶりを見せてくれた天本英世だが、もの凄い数の映画に出ている割に、主役まで演じたのは数少ない。本作はその貴重な一本だろう。やっぱりというか、彼の演じるのは正義の側ではなく、悪の側だが、そこでマッドサイエンティストであるドクター・フーを際だたせていたのも、やっぱり天本英世の怪演あってのこと。あくまで自分のペースを崩さず、訥々と喋る姿が映えてしたし、その言い方に苛つく浜美枝演じるマダム・ピラニヤとのやりとりも楽しい。かなり戯画化されているとはいえ、明確な悪の側に中心を持って行った本作のストーリーは誇ってしかるべきだろう。

(評価:★4)

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