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[コメント] シッピング・ニュース(2001/米)

これほど食べ物がまずそうに見える映画も珍しい。いや、映画そのものには大満足なんですけど。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 時間の感覚が全くなくなっていた。気が付いたら終わっていて、2時間も経過していたと言うことに驚かされた。こんな淡々と流れる、ある意味冗長とも言える映画でこんな感覚になるとは。これと言って大きな盛り上がりがあるわけでなし、ちょっと不思議なことがあるとしても、普通の生活が続くだけでこんなに面白い作品に仕上がるなんて。

 監督の力量は推して知るべしだが、配役が絶妙。主人公のケヴィン=スペイシーの冴えない中年男役ははまり役。ほんの僅かな日常での小さな嬉しさを、表すときの笑顔が又、実に良い。最初の相手役のケイト=ブランシェットは先日の「ロード・オブ・ザ・リング」の神秘的な雰囲気はどこへやら、強烈な悪女ぶりを発揮していたし、島での小さなラブロマンスの相手役、ジュリアン=ムーアもようやくはまり役に落ち着いた感じ。この人はもう若作りするのは止めるべき。むしろこういう日常生活に埋もれながら、光るところがある女性役の方が絶対似合う。あとハルストレム作品と言えば、必ず必要な子役。これが又実に上手い。3人の姉妹に一つの役をやらせることによって、自分の持つ奇妙な霊感に翻弄されつつも、母の死という事実を徐々に受け止めていくような、微妙な役を成功させていた。

 とにかく微妙な演技が要求される作品で、それだけ役者の力量に負う所の多い作品だったが、それに応えるだけの配役が出来たことがこの映画の成功だろう。ほんの僅かずつプラス方向に変わっていく感情。それをキチンと描けたのはすごい。

 この作品はプロデューサーが真っ先にハルストレム監督に持ち込んだ企画なのだそうだが、監督自身はこの脚本が気に入らず、一旦お蔵入り。そして何とジョン=トラヴォルタの手に渡り、彼の主演監督作品として企画されかけたらしい。しかし、これは脚本段階でやはり失敗。それを知ったケヴィン=スペイシーが熱烈にハルストレム監督にアプローチをかけ、映画完成の運びとなったとか。トラヴォルタ版『シッピング・ニュース』…観たいような、観たくないような…

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)ヤッチ[*] ことは[*] sawa:38[*] m[*] ぱーこ[*] shaw[*] kazby[*]

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