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[コメント] 雨に唄えば(1952/米)

一番の見どころは笑顔!これに尽きる。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 有名な「sing in the rain」の歌は知っていたが(『時計仕掛けのオレンジ』では実に効果的に用いられていた)、それ以外まるでストーリーも何も分からないまま、名画座で演っているのを知り、観に行った作品。これは本当に劇場で観ることが出来て良かった。大満足。

 物語はコメディ調で流れ、なかなか洒落た三角関係の決着の付け方(いくらリナの性格が悪いと言っても、あのオチはちょっと可哀想な気もするが…)、芸達者なオコナーの絶妙な合いの手。名曲の数々…。サイレントからトーキーへと移る映画業界の裏側をコミカルに描いた所。いやはやどこをとっても楽しい。テクニカラーの鮮やかすぎる色合いも、原色の多用によって、ますます華々しく、いかにも舞台って感じを醸していて良い。リアリティより楽しさを選択したのはこの映画に関しては正しかった。私の持論、「快楽装置としての映画」の正しいあり方、と言うべきか。

 見どころ満載で、楽しい作品。その中で私が一番感心できたのは実は「笑顔」だった。

 とにかくこの映画、笑顔に溢れている。その顔を見ているだけで嬉しくなるのだが、一口に「笑顔」と言っても質は様々だ。

 渋役として有名になったドンが最初に見せる不敵な自信に溢れた、しかし全く根拠がない表層的な笑い。踊り子として登場するキャシーの営業スマイル。その彼女を問いつめ、いたぶりの快感に取り憑かれたドンの意地悪な笑み。本当のパートナーと出会えたと確信した時の希望に満ちたドンの笑顔。土砂降りの雨の中で歌うあの圧倒的なシーンでの幸せそうなドンの笑顔。3人で映画の中で歌いまくる時の本当に楽しそうな笑み。逆恨みの快感に取り憑かれたリナの鬼気迫る笑顔。ラストでうちひしがれた時に逆転の名案を思いついた時のドンの笑顔。キャシーの泣き笑い。

 一応ジーン=ケリーデビー=レイノルズの笑顔がこの映画の中心で、その笑顔を見てるだけで嬉しくなるが、それを支えるドナルド=オコナーの存在がなんと言っても良い。常に陽気で、笑いを振りまきながら決して一線を越えない。これぞ名バイ・プレーヤーの姿!彼の、自分の本心を見せない、しかし本当に相手を思い遣る、いわばアルカイックな慈愛に満ちた笑顔が忘れられない。

 この映画を観直す機会があったら、是非彼らの笑顔に注目して欲しい。演技の幅というものを感じさせてくれるだろう。

(評価:★5)

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