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[コメント] ミスティック・リバー(2003/米)

他の人もそうなんでしょうけど、やっぱり本作で褒めるべきは役者の巧さ。ただ、全員一番評価されている役どころ以外の役で勝負しているのが一番凄いと思います。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 昨年のハリウッド映画はヒーローものが花盛りで、それはそれで楽しかったのだが、やはり時には、これぞ映画!と言うどっしりした作品も観てみたい。まさに本作はそのタイミングを計ったかのような時期に投入された。イーストウッド自身も多分にそれを意識しているようで、期するところも多かったようだが、充分にそれに足る作品作りをしていて、監督としても実力を持っていることを改めて感じさせられる。

 内容的には地味目だし、重いから、見た目で引きつけられる売りの部分はあまり多くないのだが(内容的には「スリーパーズ」(1996)的でもある)、逆に言えば、それだけに登場人物の善し悪しによってまるで雰囲気が変わってしまう作品だろう。その点において、本作ほど見事にはまった役振りはないと思えるほどのはまり具合。ペン、ロビンス、ベーコンと言った超一流どころ3人を配した監督はやはり凄い。ってか、三人が三人とも自分の一番評価される部分じゃないところで演技しているのに、それが見事にはまってる。それを見いだしたところが凄いと思うよ。

 ショーン=ペンは、つい最近『アイ・アム・サム』観たばかりで、それとは全く違った役どころってのが面白い。この人の引き出しって多いんだな。器用な役者であることを再認識させられた。一方のティム=ロビンスは役どころとしてはむしろ、得体の知れない部分で売れた作品(あるいは強い意志力を感じさせる作品)が多いのに、ここでは精神を失調した役。これも見事にはまってた。ケヴィン=ベーコンだって、奔放な役が評価される役者なのに、ここでは義務感に縛られた役…確かに凄いよな。三者三様に心に傷を持っていて、それがにじみ出てくるような見事な演技を見せてくれていた。作品賞はともかく、個々のキャラクターに男優賞は絶対にあげたくなってくる。

 イーストウッドと言えば主演作がガン・アクションものになってしまうのに、自身の監督作品はまるでそこから離れてしまうのが面白いところだ。社会派作品として評価できるだけでなく、緊張感を持った対話や、ストーリー展開など、観るべき所はちゃんと演出出来てるし、一見地味に見えながらカメラ・ワークも練り込まれている。

 ただ一つ文句を言わせてもらうなら…「もうひとつの『スタンド・バイ・ミー』」ってコピーは絶対間違ってるぞ。

(評価:★4)

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