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[コメント] 青の炎(2003/日)

もし高校生の時、私がこんな目に遭ったら…そう思わせたところが本作の面白さでした。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 貴志佑介原作小説の映画化。緊張感や感情移入度もかなり高い。何より演出が上手く、観ていて引き込まれる。

 本作は原作と較べてみるとよく分かるが、主人公の秀一の心情に入り込んだ演出が特に良い。倒叙ミステリーを青春映画に変えてしまうとは、上手い。

 この心情描写が面白い。彼はとても頭が良く、外の世界に対し如才なく振る舞っているが、実はかなりの内向的な人物であり、自分自身だけの世界を心の中に持っている。思春期の人間は誰しもそのような特別な世界を持ってるものだが、なまじ頭が良すぎるため、彼の世界は特別だった。

 義父の隆司がやってきて、壊されたのは自分の家族という外面的な世界だけではなかった。自分の内面世界をも侵食してしまったのだ。自分だけの秘密の世界に他者の圧迫を受けるというのは、容易に精神的な危機を引き起こしてしまう。

 内向的な人間だったら、そこで精神的防護機能が働く。いくつか手はあるだろうが、その一つには外面世界を拒否し、ひたすら内面に逃げ込むパターン。つまり肉体を持つリアルな自分と内面的な自由な精神を分離させてしまう(要するに思春期の頃の私がやってたことだ)こと。

 他にも物理的に逃げてしまうとか、あるいは短絡的にイチかバチかで特攻をかけるなんて手もあるだろうが、ここでは違った形で防護機能を働かせた。つまり自分の世界は完全に無事なまま、全て悪いものを排除しようとした。こういう事を考えさせた過程を丁寧に描いてくれたことが嬉しい。二宮和也なんて所詮アイドルだろ?とか思っていたが、その考えは改めるべきだったか。

 他のキャラクターも微妙なはまり具合を見せ、キャラクターで言えば、文句言えないところ。

 ただ、それ以外がちょっと軽すぎたかな?丁寧さにムラがあったため、バランスはあまり良くない。それでちょっとだけマイナス。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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