[コメント] GODZILLA/ゴジラ(1998/米)
この映画は日本の「ゴジラ」とはまったく違う。
「特撮」という古い伝統芸能の怪獣映画とは違う。
まさに「ハリウッド」映画。
お金、技術、高いレベルの映画。
「特撮」の安っぽい手づくりのあじわいというものではない。
完全なるSFX、CGの「リアル」な映画。
街を歩くGODZILLAの足、下から見上げた巨大な圧倒的なGODZILLAへの視線、へりからの街を破壊するをGODZILLA見る視線。
この視線は従来のゴジラが持ち得なかった「自由」で「リアル」な視線。
完全にやられた!
日本のゴジラはこの作品で死んだ。
ただ特撮好きの人たちはあれはゴジラではないと言うだろう。巨大トカゲだと。
確かにそうかもしれない。
しかし特撮ファンよりゴジラの製作者たちが一番びびっただろう。
「ガメラ」シリーズでやっと特撮からCGに取り入れて少しだけすすんだのに、一気に先の先の技術を見せられたらたまったものではない。
もう一度言う。ゴジラは死んだ。
今後はこのハリウッドを越える圧倒的な最新、最高レベルの技術で対抗するか、練りに練ったストーリ、演出で勝負するしかない。
このショッキングな映画は日本の特撮映画の黒船になっただろう。
しかし残念なことに新作の「ゴジラ」は今までの延長の「ゴジラ」だった。「GODZILLA」を「ゴジラ」と認めず自分たちの危機は見ず今まで通りの映画を作った。残念としか言えない。東宝は開国できないのか。
2年前取材で東宝に行った。ゴジラの製作現場を見させてもらった。撮影現場の空気は真夏だったがなぜか気持ちよくおいしかった記憶がある。ちょうどプールでゴジラが海から出てくるシーンを撮っていた。たった数秒のシーンなのに大勢のスタッフがカメラをセットしたり照明を当てたり海のシーンなのでゴジラのキグルミを着ている人に酸素を送ったりすごい熱気だった。真夏だったので全員真っ黒に日焼けしていてが真っ白な歯ときらきらした目が印象的だった。その目は全員少年の目だった。羨ましかった。本番がはじまり急に辺りが静寂につつまれゴジラが海から出てきた。本番が終わりまた辺りが騒がしくなった。映画のカメラの横で先輩のスタッフが後輩に海の波の立て方を教えていた。丸太で波ををつくる。そのふたりは本当に楽しそうに波を作っていた。
今そのときの東宝の現場を思い出した。
彼らはこのハリウッドの「GODZILLA」を観てどう思うのだろう。 まだこの現場には黒船は来ていなかった。ゴジラのスタッフの少年の目にはまだ美しい夏休みしかうつっていない。
プールの撮影現場が終わりひっそりとした屋内の撮影所に入った。巨大な町並みがそこには再現されていた。その横にゴジラが鉄の支えに釣り下がっていた。その屋内の撮影場は人がいなくひっそりとしていた。なぜかゴジラは悲しそうな感じをしていた。
ゴジラは黒船が来ていることに気づいているのだろうか。
ゴジラに近づいてみると凶暴な目をしていた。目が光っていた。
CGのゴジラに圧倒された自分を笑っているようだった。
本当の「凶暴」をみせてやるよと言っているに違いない。
CGでは感じなかった実感のある感覚がこのとき感じた。
ゴジラはまだ死んではいない。
少しゾクリとした。
ハリウッド版「GODZILLA」は「視線」、「リアル」を手にしたがこの「実感のある感覚」は永遠に表現できないだろう。
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