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[コメント] 修羅雪姫(2001/日)

今の時代、もう「アイドル映画」はいらない。この作品が「アイドル映画」 を斬る!
ina

私事であるがグラビア撮影で釈由美子さんを何回か観たことがある。カメラマンとしてではなく撮影スタッフとしてだが、とにかく彼女は「男から見るとたまらない」女性だ。外見はそうだが性格の印象は礼儀正しく控えめで外見とはまったく正反対だ。自分の性格と人から見られる印象とのギャップに彼女はわかっていてグラビアの仕事をしているがふと何気ないときその戸惑いが「陰り」として見ることがあった。天才的な写真家ならその戸惑いを見抜いて、それを「エロス」として表現することができる。そのグラビア撮影のときは写真にも彼女の戸惑いが写されていた。その写真のイメージがずっと記憶の中にある。

その撮影から2年ぐらい経ってこの「修羅雪姫」を観た。観る前から雑誌などでなんとなく内容は知っていた。釈由美子が主演で時代設定はいつか解らない世界で暗殺者として戦うストーリー。香港ワイヤーアクションとCGを使ったアクション映画。観る前たぶん「ゼイラム」のようなB級映画かなと思っていた。まあB級映画は嫌いじゃないので少し楽しみにして観た。

観終わった。「・・・。」、「・・・!」、「!!!」

観た後で思い出せば思い出す程この映画の「魅力」にとりつかれてきた。 その「魅力」とは2年前に見たあの「陰り」だ。

映画の中で彼女はほとんど笑わない。なんか表情も変だ。演技がへたなのか、映画では笑うなと言われ戸惑っているのか、ただ緊張しているのか解らないがとにかく「違和感」が画面の中に漂っていた。最初なんか変だなと思っていたが、その違和感は普段のグラビアの写真の笑顔の釈由美子と比べていたからだった。

そして記憶が2年前のことを思い出すとその「違和感」が違和感ではなくなり彼女自身の「本質」となった。

笑わない彼女は釈由美子そのまま。

泣叫ぶ彼女は釈由美子自身。

優しい彼女は釈由美子本人。

この映画の主人公は彼女の本来の姿が出ている。凄い映画だ。

映画作品としては完成度が低い。映像、ライティング、編集、アクション、CGは日本映画としてはレベルが高いが、「全体のまとまり」がひとつの塊として進んでない。ばらばらになっているというか相乗効果になってない。 これはハリウッドと比べるとアクションの歴史と技術の差のような気がする。

映画としてはイマイチだが、映像は良かった。しかしもっとも素晴らしいのは彼女だ。

松重豊嶋田久作の殺しや集団の昔の話をするシーンは彼等の演技の素晴らしさからとてもリアルな空気が生まれていた。もしかして釈由美子がいなかったらこの映画はわりと完成度の高い映画になっていたかもしれない。普通のいい映画に。彼女の「違和感」がこの映画を壊しているかもしれない。

たら、れば。なんてどうでもいい。この映画には彼女の「魅力」がしっかりと存在している。この「違和感」こそがこの映画の魅力であり、彼女の「本質」だ。私はいい映画より、「本質」がでている映画のほうが観たい。

釈由美子は自分の本質でアイドル釈由美子を斬る!

(評価:★3)

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