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[コメント] ディパーテッド(2006/米)

オリジナルに不純物を足して、水で薄めて引き伸ばした映画。
イリューダ

インファナル・アフェア』が大好きだったので、おそらくリメイクに対してはあまり好印象を持てないだろうな、と予想していたのだけれど、その落差は予想以上だった。

特にクライマックスの屋上でのビリーとコリンの対決シーン。ありゃなんだ。中坊が放課後に学校の屋上で喧嘩しているようにしか見えない。ディカプーもデイモンも三十路を超えているはずなのに、あの貫禄の無さは驚異的ですらある。

「潜入捜査官は屋上が好きなのか?」「俺はお前らと違って太陽に恥じない」

思わず背筋がぞくっとするほどかっこいいオリジナルでのヤンとラウのやり取りに比べ、笑っちゃうほど盛り上がらないビリーとコリンのしょぼい喧嘩。本物とまがい物の差をこうまでまざまざと見せ付けられることも珍しい。

そもそも公開前に読んだインタビューで関係者が口をそろえて「オリジナルは見ていない(あるいは完成まで見なかった)」とコメントした時から嫌な予感はしていたのだ。オリジナルの結構だけ借りて独自の映画を作りたかったということなんだろうけど、そういうオリジナルへの敬意が欠けたリメイクが面白かった試しがないのだ。

結局スコセッシや脚本のウィリアム・モナハンは、一体オリジナルに何を付け加えたかったのだろう。わたしには、登場人物の行動原理が分かりにくくなったことと、サスペンスの演出が平坦になったこと以外は思いつかない。あとはジャック・ニコルソンのうざったい説教か。

スコセッシは映画の快楽原則をほんの少しずつ外して、オリジナルの俗っぽさを拭い去った。でもそこに残されたのは、干からびた雑巾のような魅力の無い映画だった…と思ったらアカデミー賞かよ。『タクシードライバー』の監督が泣くよ。

(評価:★2)

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