コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ザ・マジックアワー(2008/日)

画面だけでなく、お話自体も奥行きがなくて、ちょっと押したら背景の書割が倒れちゃいそうな頼りなさ。役者の個人プレイで笑わせてもらいはしたが、映画全体としては正直「馬鹿馬鹿しい」という思いが終始ついてまわった。
イリューダ

三谷幸喜はかつて「日本の役者は人生を背負いすぎている。私はいい意味で生活感のない俳優を選ぶ」みたいなことを言っていて、そのときはなかなかいいこと言うな、と思ったのだけど、この作品ではあまりにも登場人物の行動原理が理解を絶しすぎていて、生活感どころか現実味がなさ過ぎる。

プロット自体がありえない、というのはたいした問題ではない。そのありえないプロットをどのようにしていかにもありそうに見せるか、という問題に対する努力のあとが、まったく見えないということ。これは監督三谷の特徴なんかじゃなく、単に彼の能力の致命的な欠落なんではなかろうか。村田(佐藤浩市)が唐沢寿明演じるスターに対して、かつて一度だけ会った焼肉屋の話をして無視される短いシーンなんかには、確かに三流役者の滑稽さと悲哀が出ていて村田という人間がそこに存在する感じがあった。だが舞台が守加護に移ってからは完全な絵空事である。古い毛布の切れ端のエピソードなんかも、いかにも「これは伏線ですよ」というとってつけた挟み方でしらけるったらない。要するに映画ではなくコントなのである。コントとしてならば、文句をつける筋合いはないが、「この作品で初めて映画の撮り方がわかってきた」とか言われてもなあ…。

佐藤浩市が意外にもコントができる、ということを教えてくれたのを加味してプラス1点。次は「映画」をお願いしますよ。三谷監督。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)サイモン64[*] ぽんしゅう[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。