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[コメント] 潔く柔く きよくやわく(2013/日)

あの難解な原作を映画にするなんて不可能。カンナの傷の深さも何故立ち直れたのかも伝わるわけがない。皆さん、原作を読んでください。(原作のネタバレ含む・・・というかほぼ原作の話、長文→)
カルヤ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「あいつのこと好きになれなかったから後悔してるんだろ?」

カンナに向けられる禄のこの台詞の衝撃ったら。だって、少女漫画の定石から考えてもカンナはハルタのことが好きなはずだった。それなのに好きじゃなかったなんて。

あぁ、原作は何度読み返したことか。

カンナがハルタのことをどう思っていたのか、原作でもハッキリ描かれているわけではない。何度も何度も読み直して私が出した答えは、「カンナはハルタのことを好きになる直前だった」ということである。

「ハルタは自分のことを好きなのかどうかわからない、だから私もハルタへの気持ちに踏ん切りがつかない」・・・カンナがそんな気持ちのときに、ハルタが事故死したのだと思う。好きになる直前だったからこそ好きになれなかったことをあんなに後悔したのだろうし、「ハルタはカンナのことをすごく大事に思ってた」という話を聞いてスッキリできたのだと思う。つまり結論は「ハルタの馬鹿!あんたさえちゃんと気持ちを伝えていればカンナはこんなにも罪悪感を抱えたまま生きることにならなかったのに!!」・・・である。(この意見は、賛同してくれる友人が多いが、答えを出せずにいる友人もいる)

ハルタの死以降、ほとんど誰にも心を開けなかったカンナ。休日はいつもDVDを見て過ごし、その結果映画関連の会社に就職したカンナ。寄ってくる男どもを「虫みたい」となぎ倒していったカンナ。上司に腕をつかまれたときの“あの顔”は、赤いペンキをハルタの血と思い込んで混乱した過去を思い出したわけではない。“男そのもの”への拒否反応である。ハルタへの気持ちを整理できていないカンナが、異性を受け入れられるはずがない。

カンナは、本当に深く深く傷ついていた。その様は、カンナの高校生時代と社会人時代だけを切り取ったこの映画で表現できるわけがない。百加と親友になれたのも壮絶な物語がある。本作が失敗なのはまず、カンナが深く傷ついていることを表現できていないからである。突発性難聴のエピソードだけ採用しても無駄だろう。原作のように再発して苦しむわけでもなく、ついでに両側性って(突発性難聴はふつう片側性である)。

禄の物語にも問題がある。禄が立ち直れたのは、事故死した希実の姉、愛実のおかげではない。希実本人のおかげである。霊となって禄を見守る希実。禄とずっと話したかった希実。彼女の切実な思いが禄に届いたからこそ、禄は立ち直れたのだ。言葉の遅れていた睦実(愛実の娘)が禄の顔を見て突然話し始めたのも、希実が導いたことである。

この睦実が話し始めたエピソード、“見守る存在”の希実を知らない原作未読者たちには相当意味不明だったに違いない。漫画であれば違和感なく受け入れられる希実の存在、その存在なくして語り得ない禄の物語は、やはり映像化には無理があった。せめてこの睦実のエピソードは削ってしまえば良かったのに。

そして映画ではシレッと立ち直っている朝美。その後を語られもしないマヤ。それで良いわけないだろう。朝美とマヤが立ち直らずしてカンナが立ち直れるわけがない。

とは言え、朝美とマヤの物語は時間的に削らざるを得ないことは理解できるが・・・いやいや、やはり映画化したのが間違いだったのだ。朝美とマヤだけではない。亜衣を!一恵を!やっぱり梶間も!それなら瑞希も!音々もいたな!百加だってあれだけじゃ全然足りない!野原先生は本当はもっと良い女だ!・・・この愛すべき登場人物たちをちゃんと描かずして、彼らから見たカンナや禄たちを描かずして、この物語は成立し得ない。

もし映画化に意味を持たせるのであれば、最初に述べた、原作ではハッキリ描かれていない「カンナはハルタのことをどう思っていたか」をしっかり描くべきだった。私と同意見でなくても良いから、そこを描く覚悟が欲しかった。

キャスティングもな〜。田山涼成さんは輝いていたが、全体的にイメージと違った。特に野原先生。役割というか描かれ方というか、とにかく中途半端。

文句ばかりになってしまったが、☆1ではない理由としては、イメージとは違ったけども、長澤まさみと岡田将生が思ったより良かったことが大きい。加えて、「さて、あの名作をどうまとめたのか見届けてやろう」という上から目線(←好きな漫画原作の映画を見る際の正しい心構えだと思っている)で何の期待もしておらず、腹は立たなかったので。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)まりな セント[*]

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