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[コメント] ちはやふる 下の句(2016/日)

続編製作を見越しての地味展開だとは思わない。新の苦悩と情熱の表現が甘いのが問題である。しかし、詩暢ちゃんと須藤さんとヒョロくんに免じて☆4つ。(原作と前作のネタバレ含む→)
カルヤ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







若宮詩暢に松岡茉優がキャスティングされたと聞いた時点で、楽しみで仕方なかった。そして、彼女は期待通りどころが期待以上に詩暢ちゃんとしてスクリーンの中に存在していた。詩暢ちゃんのかるた愛、詩暢ちゃんの孤独、詩暢ちゃんのいけず、詩暢ちゃんの可愛さ、すべてを完璧に表現していた。

原作にはない新の祖父のお葬式のエピソードも、新と詩暢ちゃんの関係性が上手く表現されているだけでなく、詩暢ちゃんのキャラクターを表すにも最高の場面になっていた。ダディベアの激レアタオルを見つけたときの表情がもう(笑)

そして、『上の句』に引き続き須藤さんとヒョロくんである。みんな大好き須藤さんとヒョロくんである。

映画ではヒョロくんでなく須藤さんの判断で全国大会対策ノートを瑞沢高校に渡しており、須藤さんが完全に良いとこ取りした形になっていたが、それも良し。須藤さんファンがますます増えたであろう。恐らくヒョロくんファンも増えたであろう(笑)

ただ、正直『上の句』と比べて作品としては完全に物足りない。

物語の軸は、新がかるたをやめてしまったこと及びそれをどうにかしようと奮闘する千早の姿だ。にも関わらず、新の苦悩がそれほど伝わってこないのが問題である。かるたをやめたのは新たなのに、何故千早ばっかり悩んでいるの?という話になってしまっている。

原作では、新がかるたをやめたきっかけは、単なる「祖父の死」ではなく、「自分がかるた大会に行っていなければ防げたかもしれない祖父の死」である。

映画(『上の句』のほう)では、新が祖父を家に一人残してかるた大会に参加した(祖父がそうしろと新を行かせた)という描写があるのみだが、原作では、まさにそのときに容態が急変したため発見が遅れ、それを深く後悔した新はかるたができなくなってしまったのだ。

そこを描かずして新の苦悩は表現できないと思うし、実際あまり苦悩しているようにも見えない。原作では、新は千早や太一に「電話とかせんといて」なんてことも言うし、福井まで会いに来た千早と太一の前でかるたを蹴り飛ばしたりもするのに。

そして競技会のほうも、前作は「東京都大会優勝」というわかりやすい盛り上がりがあったが、今作は「全国大会善戦」でしかないためますます展開は地味になり、作品として完全に物足りなくなってしまった。よって、楽しみは詩暢ちゃんのと須藤さんとヒョロくんだけになってしまった(すごく楽しかったけど)。

もう一つの不満は、テーマになってしまっているので仕方ないしどうでも良いといえばどうでも良いが、かるたをする格好良い新が全然見られなかったことである。新のいや〜な、いや〜なかるた、ぜひ見たかったなぁ・・・。

ただ、続編制作が決定しているとのことなので、新のかるたはそちらを楽しみに待つこととする。今、原作のほうは結構重要な局面なんだけども、どのエピソードがどう取捨選択されるのか楽しみだ。周防名人も出るのだろうか・・・誰が演じるんだろう・・・原田先生のかるたでの活躍も見たい・・・。

多少の不満はあるが、原作ファンに次回作を楽しみにさせた時点で、この前後編に及ぶ映画化は成功だと思った。

(評価:★4)

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