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[コメント] サイレントヒル(2006/カナダ=日=米=仏)

DVD特典に「UFOエンディング」があるものと信じて観た。………なかった。
はしぼそがらす

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 元ネタとなったゲームも、映画化作品も、『バイオハザード』よりは断然こっち派である。コメント数から鑑みるに圧倒的少数派のようだけれども。

 ゲームにありがちな強引な展開&物語性を何とか無理なくつなぎ合わせまとめあげた手腕、そして細部にはとことんこだわり尽くすマニアックな原作への偏愛は、SH好きにとっては大変嬉しい製作姿勢であり、上映中何度「アンタ(監督)も好きねェ」と身をくねらせたかわからぬほどであった。(ちなみに舞台と物語は原作シリーズの「1」、クリーチャーは「2」、エンディングテーマは「3」のものを使うという凝りよう)

 ただ、惜しむらくは主人公を「父親」ではなく「母親」にしてしまったこと。原作では、やもめの中年男が血の繋がらぬ娘(亡き妻と拾った捨て子)を探してあの街を独り行く姿が物語をより一層深く哀しいものにしていた(サイレントヒル来訪の理由も、娘に「行ってみたい」とせがまれて休暇を過ごしに出かけた、というもの)。

 それを、ヒステリカルな母親にしてしまった上、「ダンナに隠して娘を連れ出し強行突破でゴーストタウンに侵入」という冒頭のご乱行によって、奇禍に巻き込まれてもいまひとつ自業自得というか、年増のスクリーミングクイーン鬱陶しいというか、むしろ婦警さんカワイソーてな具合でイマイチ感情移入がし難かった。オッサンが主役じゃ売れにくいのはわかるけど、「とりあえずホラーにはスクリーミングクイーンいっとけ」ってスタンスはちょっとお安いよなーと。

 しかし、観終わってつらつら思い返すに、あれはあれで製作側の計算が働いているような気がしてきた。主人公が夫に黙ってサイレントヒル行きを決行したこと、すなわち「子育て」という夫婦にとって一番大切なところで父親たる夫を信用し切れなかったこと、このことがあのエンディングに帰着しているのかな、と。そして夫のほうも、あの街で妻の気配を感じていながら、最後の最後で妻と子の安否を警察の手に委ねて帰ってきてしまった。その夫婦の「家族」としての決定的な「溝」が、同じ家に暮らしていてももう触れ合うことは出来ないという罰になったのではあるまいかと思う。

 娘のほうはアレだな。アレッサの嫉妬だな。シャロンをアレッサの「良心」として切り離し、せめて彼女だけは幸せになって欲しいと新しい両親の元へ託したものの、半狂乱になってシャロンを探す母親の姿を見てるうちに、「わたしもそんな風に愛されたかった」というアレッサの哀しい苦しい気持ちが、シャロンを手放しで元の幸せな境遇に戻すことはできなかったんじゃないかと思う。アレッサの分身(復讐心のほうの)が「わたしを連れて行って」とローズに抱きつくところはちょっと切なかった。

(評価:★4)

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