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[コメント] 東京タワー(2004/日)

東京の街がパリの街に負けない美しさで描かれているこの映画はぜひ海外に出してほしいのだが、のっぺりとしたストーリーでは国際的な評価は望めそうにない。それでも、素敵な映像と美しい役者の方々に得点をあげたい。
Osuone.B.Gloss

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







だいたいにして不倫を美しく見せようというのが間違っている。不倫とは時にはわくわくするかもしれないが、根本的にどろどろとして、びくびくとしているものだ。

恋は刹那的であり、一瞬にして燃え上がるものだ。しかし、愛は継続的なものであり、将来を見据えた展望も含めて存在する包括的な感情だ。不倫は恋だ。むしろ欲望だ。誰かを不幸にしていることなんて考えもしない、実に自分勝手な論理でその瞬間の感情を正統化する卑劣な行為だ。だが、愚かなるかな人間は(もちろん自分も)その瞬間は全くそのことに気づかないのだ。

この映画はハッピーエンドで美しく終わる。(ように見える)しかし、やはりこれは欲望に目がくらんだ刹那的な恋でしかない。愛ならば相手が築いた幸せや成功を壊したりはしない。だからハッピーエンドに見えて、あの二人の行く末にはとてつもない困難が待っているのだ。愛があればなんて言っていられるのはほんの数年であり、詩史は今までの生活レベルには戻れないので、華やかな昔を懐かしむと同時に、生活力のない耕二をだんだん疎ましくなるのだ。そして、耕二は、歳をとっていく詩史の身体にも飽き、眼前に現れる若い女性に惹かれていくのだ。そんな結末が見えて仕方がない。

この映画をこんな風に見てしまう自分は、現実的という言葉で片付けるより、夢のない悲しいひねくれ者なのかもしれないし、決して自分はこんな風に生きていけないとあきらめているしょぼくれたやつかもしれない。それも悲しい。

でも、本当に映像は素敵だったよ。東京ってこんなに綺麗に撮れるんだね。素直にそう評価していればいいんだよな。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)アルシュ[*] yasuyon づん[*] TOMIMORI[*]

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