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[コメント] 食べて、祈って、恋をして(2010/米)

なんというか、「おなかの減っていない人の理屈」にしか聞こえない。このヒロインに女性は共感するの?
プロキオン14

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「私もこんなに好き勝手言ってみたい!」「こんな風に、あちこち回ってみたい!」みたいな、「縛られないあこがれ」ってあると思う。たいてい、みんな日々の暮らしに不満を抱え、時々何もかも嫌になって、「もっと自由に生きてみたい!」という気持ちになる事も多いはず。男女共通で。

でも、この主人公は「どこまでいっても満たされない気がする」。それは「自由に生きてみたい!」と似ているようで全然違う気がする。映画の世界には、時々こういう主人公が登場する物語がある。そのなかでヒロインはさんざん周囲を振り回した挙句、「本当の恋」とかに巡り合い、ハッピーエンドを迎える。ジュリア・ロバーツ主演の『プリティ・ブライド』なんかもこのジャンル。

しかしこの映画は「とことんまで」それを突き詰めた映画に思える。最後の最後まで「妥協とかはしない」、ここまで「自分探し」を突き詰めるのは、ある意味、幸せ者だ。大抵の場合は、「毎日を生きてゆかねばならない」。「自分の為だけに生きているわけじゃない」。「そんな時間も、お金もない」。

私が子供の頃から好きな女性歌手がいる。彼女は、結婚し、出産し、育児をし、そして今でも歌っているのが嬉しい。こんなにも長く(35年)そういう人のファンでいられる自分は幸せだ。そんな彼女が言いました。「結婚した後も、旦那のことは大事だけど、やっぱり自分が一番大事だった。けど子供が生まれてから、すべてが変わって、子供の事が一番大切になった」と。それは特別なことではなく、ごく自然の事だと思えた。

この映画の中で「きっかけ」として「バリでの占い」が描かれているが、なんだか本当のきっかけは「親友の出産」のような気がする。親友曰く「子供を産むのは、顔に刺青を入れるのと同じくらいの覚悟が必要」。その親友の姿を見て、その姿に自分を当てはめるのが怖かったとか。それなら少し理解できる気もする。

理解できない言葉を次々に並べて、前夫も、俳優の卵もバッサリと切り捨てても、もしも授かったわが子に「親子やめるわ」なんてさすがにいえないと思うし(いいそうだけど)。

映画が始まって半分過ぎた頃、ようやく理解できる言葉をいった。「前夫に許してもらい、解き放って欲しい・・・」と。少女の婚礼に自分の過去を重ねて、ようやく本当の自分の言葉が出た気がする。終盤にハビエルにも「独りで勝手に決めないでよ」といった。彼は、彼女を縛らないつもりで、二人それぞれに「個」を尊重して生きながら愛し合おうと言ったと思ったが、それに激高する主人公。自然体でただ純粋に愛を重ねた関係に、「現実」の入り込んだことが、急に不安にさせる。

でもそれは「おなかの減る心配のない人の言葉」だね。バリの薬剤師の母娘を見ればそれはよく判る。「精一杯に生きてる」姿が日常なのに。この親子に青タイルの家をプレゼントしてあげた話は「魔法みたい」で素敵だと思うけど、あんた汗一つかいてないじゃない?せめて自分も何か、材木とかを集めたりして、店の入口の看板を作りました!とか、「誰かのために、何かをしてあげる喜び」を、自分にあたえなさいよ。

登場人物は、主人公以外は、善人ばかりだ。だから、前夫と役者の卵がバッサリ捨てられるのが見ていて本当につらい。「人の不幸と引き換えの、自分の幸福」を追う姿が、見ていてつらい。同じセリフを誰かが自分に言ったとしたら、とても悲しい。男女の別れなんてそんなものかもしれないが、「夫婦の別れ」がそうであってほしくない。

旅でであった二人の男。私は主人公にとって、ハビエルよりも、インドのリチャード・ジェンキンスのほうが、必要な存在な気がする。別に説教しなさい!って言ってるわけではない。彼も人生を失敗し、後悔を抱えながら生きている。そんな彼がリズをみる視線は、「娘を想う父親のまなざし」にみえた。「約束をして欲しい。自分を許せるようになるまで、ここにいなさい」というセリフには愛が溢れていて、泣きそうになった。このインドの話が一番好きだ。

ずいぶん長いレビューになったが、こういうテーマにしては珍しく長尺な映画。ロードムービー風に見てしまえば楽しいんだろうが、これだけ遠回りしても、まだリズは「答え」を見つけていないような気がする。個人的に一番「こうあって欲しい」結末は、ハビエルもいい人だが、前夫のクラダップがバリを訪れて、「もう一度プロポーズ」をする、なんだが、バリに行ってからは思い出しもしてないし・・・。だから私好みの映画ではない!ということで、3点。

(評価:★3)

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