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[コメント] フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(2017/米)

夢の国のすぐ隣。お金はなくても夢はある人々が、助け合って、いがみ合って、肩を寄せ合って生きてゆく。そんな現実を、子供の目線を通して見る映画。パステルカラーの下に埋めてゆく、解けない真夏の魔法。
プロキオン14

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







2年前ぐらいに「貧困だ」と実名を出して名乗った女子高生を、ネットで叩きまくる、という事件があった。どうやらそういう人たちには「貧困」というものは、ボロボロの服を着て、雨漏りするような家に住み、食うや食わずの生活としているのでなければ「貧困」なんて言うな!という価値観みたいで。だから、スマホを持っているとか、ランチを食べたりすることを挙げ連ねて、ボコボコに叩きまくるようだ。

そういうのは「絶対的貧困」というそうで、それに対して、社会の中で見ると貧困に属すという「相対的貧困」というものがあり、先の女子高生はそれにあたるようだ。判りやすく言えば「格差」。日本人の6〜7人にひとりはそれにあたるそうで、先進国の中でも高い割合なんだとか。日本は豊かな国ではなかったんだ。そして貧困を口にした人を叩くようなひとは「心が貧困」なんですね。

と、貧困問答は筋違いなので、映画に話を戻すと、やはり貧困のシングルマザーの物語なんですね。でも、毎日を楽しく生きようと、ギリギリのところで踏ん張っている。でも踏ん張れない者たちが堕ちてゆく闇はすぐそこにあって、片足つっこんだ状態。デフォー演じる管理人は厳しくも心温かい男のようだ。それでもどうにもできない現実。実際にそれは、私の周りでも、あまり変わらない気がする。

子供のストレートな行動はまぶしい。いつでも全力だ。ムーニーが仲良しだった男の子の所へお別れを言いに行ったときに、男の子の母(殴られた女)がそっとムーニーを抱き寄せるところで、ぐっと来た。そして女の子の部屋にお別れを言いに行ったとき、泣いて言葉が出ないムーニーを、女の子が手を取って一緒に走り出す。それまでムーニー達に「ついてゆく」だけの女の子だったのに、初めて自ら行動に出たその姿。あーもー号泣です。そして二人がどうなったかなんて、結論を出すことは無意味だ。魔法の中を二人の女の子は走り去った。それだけでいい。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)たろ[*] jollyjoker[*] シーチキン[*] 死ぬまでシネマ[*]

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