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[コメント] 忘れられた人々(1950/メキシコ)

私は、ブニュエル氏の「好奇の目」にとても興味がある。
くたー

(どこまで本気かは知らんが)社会的なメッセージを含めた映画という事だが、社会的であろうと、倫理的であろうと、必ずその根源には「好奇の目」が存在する、という事実。取りも直さずそれは、残酷な描写を生き生きと写すシーンを目の前にして、多くの観客がまず最初に感じることは、同情でも嫌悪でもなく、「好奇の目」を隠すやましさである、という事とほぼ同義である。

映画の中に数多く現れる、子供達の残酷で嬉々とした所業を目の前にして、観客は(無意識であろうと、嫌悪以前にやましさで)思わず顔をしかめる。ブニュエル氏はそれをさらに観察する。「ナルホド、隠すと何とも滑稽でイヤらしい事」。氏本人が意識してなくとも、もうこれは思うツボ的構図。

ブニュエル氏は「好奇の目」を、別に肯定もしなければ否定もせず、ただ生理的レベルの感覚として、当たり前のように受け入れている。ということは、明らかに好奇を伴った子供達の所業の描写を通して氏がしていることは、観客の(ある意味サディスティックな)生理の拡大に他ならないのでは(またそれを意識してやってなさそうなところが、コワイ)?そしてさらに社会的意見を含めたことで、社会的メッセージと好奇の目が一見両立し難い事に見えて、実は深い因果関係で繋がっているという事実を証明する結果にもなっている。その意味では、画期的な映画と言えるかもしれない。別に好奇の目を持ってたからといって、解決してはいけない法なんてないってことだし。

ブニュエル氏の優れた映画には、必ず自分で切り取った光景を、自らが嬉々として観察している姿が目に浮かぶ。まるで現実が裏返ったような、不可思議な(それでいて、何ともオカしさを喚起する)光景を描く一方で、生理的感覚で観客の生理を喚起する、類い稀な観察者である事を、肝に銘じておきたい。毎回毎回思うツボは さすがにクヤシイ!(笑)

(評価:★4)

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