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[コメント] 東京物語(1953/日)

背景は違うとはいえ、いつの時代にも変わらないものがここにはある。この映画を見て、それぞれが日本人として同じ苦味や慈しみを感じていることだろう。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







志げや幸一が不当に親達をないがしろにしているようでそうではない。紀子がただ一人美しい心の持ち主に思えて、実はそれもまた違う。片や戦後の復興期に必死で毎日を生きてる人たちで、片や夫という過去の人間を断ち切れないでズルズル日々を送っている人。何が良くて、何が悪いなんて感覚とは無縁の世界。一生懸命生きてるから親への心遣いが出来なかったり、時間を止めて生きているから周りのものに目をかける余裕があるだけだと思う。紀子と親夫婦を繋ぐものは、時代にとり残されたものたちの共感のような気がする。最後にとり残された義父と紀子の会話と「ズルいんです」というセリフが、とてももの哀しい。

家庭の崩壊を悲劇としてではなく、無常感のうちに描いている。そして常ならざる日常で同じ営みを繰り返している人たち、言い換えれば変わっていくものと変わらないものを、何に肩入れすることなく非常に簡潔に、慈しみを込めて描き出す。マスターピースと言われる所以はそんなところにあるように思える。

(評価:★5)

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