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[コメント] 少女ムシェット(1967/仏)

追われるウサギの、最後の一蹴り。4.5点。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ムシェットの着ている粗末な服が、粗末な家の痛んだ壁に、まるで保護色のように同化する。そしてそこには、彼女のキッと見据える目のみが浮かびあがる。ブレッソン映画の目印である、目と手の存在。この映画でも、ムシェットの世の中に対する、怒りと抵抗の有り様が、セリフやアクションよりも、手と目によって雄弁に語られる。まさに、目と手による、少女の不幸に対する怒りの物語。

とにかく不条理な不幸に対する、ムシェットの押さえつけられた怒りのボルテージがスゴイ。少しの希望のかけらを見つけても、すぐに不幸に押し流される不条理な人生。彼女は結局最後まで憎み、怒ることをやめなかった。自暴自棄になりながらも、結局彼女を死に向かわせたのは、怒りだったと思う。追い立てられて死ぬ運命よりも、いっそ自らが決着をつけてやる。瀕死のウサギを見ながら彼女が考えたことは、そんなことではなかったのだろうか。それにしても、迷いを断ち切るための道程として、三度も転がせるところなど、もう痛ましくて見てられない。でも結局、彼女なりの抵抗を完成させてしまった。死をもって。

印象に残るシーンはいろいろあるけど、襲った男の背中にまわしてガシッと掴んだ手、アレはかなり脳裡に焼きついた・・・。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)けにろん[*] 寒山拾得 ぽんしゅう[*] 動物園のクマ[*] よちゃく[*]

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