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[コメント] 影の軍隊(1969/仏)

暗闇に押さえ気味に差しこむ青白い光や錆びた赤など。その色彩設計の何と端正なこと。奇を衒わず安定した構図を黙々と切り取るカメラワークも、ひたすら端正。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







夜の青さ。壁の漆喰に浮かび上がる色彩。たいまつや蝋燭の扱い。暗闇に浮かびあがる人物。蒼ざめた顔・・・。隅々まで計算が行き渡っていて、画面的には間然とするトコロが殆どない。派手さはないけど、全くもって良い仕事してます。

エピソードごとに十分なフォローが利いてないので、話の展開だけ追うと幾分散漫な印象を受けるかもしれない。でもあくまでここでの主眼は、100%冷徹になんかなりきれないのが分かっていながらも、それでも冷徹な仮面を被り続けるレジスタンス連のある種の悲壮感にあるように思える。

死を前にして隠しきれないリノ・バンチュラの狼狽。裏切りを犯した後で仲間と対面する時の、シモーヌ・シニョレの蒼ざめた顔。ストイックなまでに感情が抑制された中で、わずかに露呈してしまうあまりに「人間的」な顔。あえて説明で深入りせずに甘さを排したからこそ、こういったシーンがより鮮烈な印象を残す。ところどころ展開を端折ってるのも、実はこういった計算からくるところも少なからずあるように思える。

ともあれラストで彼らの最期が簡潔に明らかにされる。ごく平凡な感情を持ち合わせているのにも関わらず、結局はそれでも死ぬまで冷徹であろうとする彼らの闘いは続く。端正な佇まいながらも悲壮感が漂う逸品、だと思う。

(2002/11/27)

(評価:★5)

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