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[コメント] キング・コング(1933/米)

モンスターの創造主なるもの、えてして人間嫌いのマッドサイエンティストというのが相場だが、この映画の創造主もまさにその典型、という気が。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







サイエンティストではありませんが。

自らが創り出した「キングコング」というモンスターに対する愛情が、ヒシヒシと伝わってくる。動きや表情の細かいニュアンスに富んだ味わいとか、人間世界への登場シーンや墜落シーンの印象深いスペクタクルとか。それはもう偏執的なまでの愛が伝わってくる。殺戮シーンの力の入れようなんて、明らかに偏執の度合いが一線を越えてしまっている。とても1930年代のアメリカ映画の感覚とは思えない。

もしこの映画に難点があるとすれば、全ての悲劇はキングコングに与えるおもちゃとして、「人間」が投入されてしまったことにあるような気がする。モンスターや恐竜ばかりの映画ではいかんともし難いので、とりあえず人間を登場させるワケだが、元来人間を描くことに興味がないのか苦手なのか、どうにもおざなりになっている気がする。主な難点としては・・・

●船上で恋におちるクダリがあまりに唐突すぎてワケわからん。そもそもドリスコルの「無愛想なまさに(男尊女卑気味の)海の男」というキャラ設定が、後々の話において全く機能してないような気が。

●監督デナムのキャラ設定が曖昧。「己の目的のためなら手段や危険を顧みず」な、かなりマッドでありながらもある意味純粋なキャラかと思いきや、あっさり映画そっちのけで金儲けに走るし。だからと言っていわゆる「悪役」なのかと言えば、そこまで悪者という感じもしないし・・・。

●ラストの「美女が野獣を殺した」という締め方は一体・・・。アン、悪いけどアンタ完璧コングに食われてるよ。あれだけ印象深くコングの最期を描かれた後では、そのセリフは説得力なさ過ぎ。窮地に追いやられても終始人任せで、ただ横でギャーギャーわめいてるだけなんだもんな。

他にもいろいろとあるが、ともあれ、コングをはじめとしたクリーチャーの描写と人間に対するそれとの力の入れ具合が明らかに釣り合っていない。ということで、映画としてはかなりイビツな出来かと思う。が、しかし、おそらく製作サイドの思惑とは別に、後々の人によりこの物語のイビツな部分を様々な解釈で補修されながら、より愛すべき存在として、より理解の及ぶ存在として、コングは人々から愛されていくようになる。まるで創造主の手を離れ、突然変異でコングが一人歩きを始めたかのように。

巷の評価と製作サイドの意識とのズレを感じるという意味では、最初は『フリークス』を観た時と同質の違和感を感じたが、むしろそれよりも、案外『フランケンシュタイン』を地で行くような映画なのかもしれない。

(2005/12/19 再見)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)りかちゅ[*] 水那岐[*]

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