コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 叫びとささやき(1972/スウェーデン)

赤の挿入、時計、聞こえてこない会話等。ベルイマンの中では、最もテーマを視覚化させる事に成功した映画だと思う。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







死人が生きかえったり、性器をガラス片で傷つけたり(思い返すだけでトリ肌)、唐突に乳房を出す召使とか、常軌を逸した描写がかなり多いが、テーマを抉り出すための手段としては、有効に機能している、と思う。

今までにないほど、ダイアローグが切り詰められてるのも印象的で、凝縮したセリフの重みもさることながら、叫びとささやき自体の音の響き、そしてその間に横たわる沈黙の空間の存在、これらの対比がテーマをより強調している。

(召使も入れて)4人のかなり濃いキャラが出揃って、羨望と嫌悪の入り混じった不毛な対話を繰り広げるわけだが、特に印象深いのが、母性を象徴するような召使と、屈託なく見せかけて誰よりも残酷な三女。特に長女に「昨晩の会話のことだけど」と振られて、三女が「何のこと?」と切り返すシーン、あれにはゾっとした。この映画で一番怖いシーンかもしれん・・・。

ともあれ、以前の彼の映画ではさんざん「神の沈黙」に悩まされているにも関わらず、ここにきて(ラストシーンで)沈黙に救いを求める事となるとは、何とも皮肉。そして『秋のソナタ』をはじめとした70年代以降のベルイマン映画には、この沈黙の救い(または沈黙することでの妥協)が色濃くなっていく。としておかないと、「私の心に最もかなった映画」という監督自身のコメントがさらに不可解になってしまう・・・。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (7 人)Orpheus ゑぎ[*] よちゃく[*] uyo[*] セント[*] muffler&silencer[消音装置][*] chokobo[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。