初めて一つ屋根の下で夜を共にするシーン

「ジェリコの砦」の向こう側でなおためらいを見せているコルベール

それを他所にゲーブルが何気に鼻歌ひとつ

なぜかそれを聴いて彼女は着替えを始める

後になって知ったトコロによるとその歌のタイトルは「狼なんか怖くない」

・・・カッコ良過ぎ

つーかこのテのネタを見逃してるんじゃないかと、思わず探し直したくなる程の小粋な演出のオン・パレード。

ハネッ返りがなんでハネっ返ってられるかってぇと、世間の怖さを知らないっていうのはもちろんあるけど、自分の本当の価値が分かってないからってのもある。足見せヒッチハイクにいい顔しなかったり、人にメシをたかろうとするのを断固阻止するゲーブルを見てるとよーく分かる。そして裏を返せばブツクサ言いながらも、知らずのうちに彼が「彼女の本当の価値」を認めてることもよーく分かる。そこらヘンの話の進め方が実にウマイ。ベタつくシーンなんて一個もないのに、ちゃんと愛情が伝わってくる。粋だなぁ。

ついでに闇雲に分からず屋に見えたオヤジが、普段泣かない娘が涙を見せるエピソードで、初めて闇雲ではなかったことを分からせるクダリもウマイ。結婚に乗り気でなかったのは、娘が本気でホレてないことが何気に分かってたんだとコチラに教えてくれるあたりの配慮も抜け目がない。ともあれこれだけベタついた感情を見せない恋愛映画も珍しい。本当にベタつくのは映画が終わってから。ラッパと毛布一枚で「後はご想像にお任せします」。パーフェクト！

ちなみにこの映画でコルベールが、男物のパジャマでウロウロする姿を披露してからというもの、全世界で「ダボダボの男物の服を寝巻き代わりにする女性が可愛く見える」男性率が急騰したらしい（真偽は定かでない）。

(2002/10/21 再見)