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[コメント] アザーズ(2001/米=仏=スペイン)

確かに画面を見ごたえあるものにしているのはニコール・キッドマンかもしれない。しかし物語を見ごたえあるものにしているのは、彼女の娘役の子だと思う。3.5点。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







というワケで、皆様がニコールに釘付けになっている間、個人的にはあの娘から目が離せませんでした。

とりあえずは主人公。子供の難病のために、さながら不純物を一切取り除いた育て方をしようとする、彼女の偏執的なまでの厳しさ。そしてそんな自分を支えてくれるハズの夫が不在なことと陰鬱とした環境のため、時にそのプレッシャーと不安に耐えきれずにヒステリックな状態に陥る。確かに複雑なキャラクターだとは思う。しかしその複雑さには曖昧な要素はなく、言ってしまえば「どこまでも読める」という点では、コチラとしてはとても分かりやすいキャラとも言える。

しかし彼女の娘はどうだろう。娘の場合は(立ち位置の曖昧さもあるが)、愛憎というか、母親から愛されているのか、いないのかという不確定なものの間で揺れ動いてるがゆえに、主人公以上に複雑な屈折振りを見せているように思える。愛する親が頭ごなしに否定し、退ける「見えない」世界。それを目の当たりにしていることで、自分の中に抱えてしまっている彼女の葛藤。おそらく自分が親から受け入れられるには、自分の抱えている世界を親に認めてもらわなければ始まらないと、彼女は思っていたのではないだろうか。そんな思いを他所に、頭ごなしに否定し、厳しくしつける主人公。それどころか悪い影響を懸念して、母親の過保護振りは弟の方に偏る一方。弟をあれだけ抱擁する母親を尻目に、ロクに抱きしめてももらえない自分のことを彼女はどのように思っていたのだろうか。

物語は全く違うとはいえ、彼女をみてフと頭を過ぎったのは『ミツバチのささやき』。彼女を冒頭の食事シーンを見て、弟との対比から彼女はイサベルっぽいな、とまず思った。しかし話が進むにつれて、彼女はイサベルでありながらアナでもあることに何より驚いた。はっきり言ってニコール・キッドマンの役柄に輪をかけて難役だと思う。演じた子は巧いという以上にエライ。

と、画面の魅力を追いつつかなり楽しめたのだが、一つだけ致命的なまでに生かしきれてない設定があるように思えた。自らが子供を殺めてしまったという点。それを知った瞬間、主人公のいろいろな思いがないまぜになった狼狽、そしてそのことに対する子供たちの許しは、などがほとんど描かれてなかったし、おそらく意識下に影響を与えていることからくる伏線みたいなものも、当然もっとあって良いような気がする(強いて言えば、老婆と間違えられて母親に襲われてから不信感を募らせるクダリが、らしいと言えばらしい・・・かも)。所詮幽霊話だしサスペンスが主体だから、そこまで考える必要はないのかもしれないけど、そういう設定を使う以上は使い切れてなければ不満にもなる。ただでさえ複雑な話なんだから、いっそそんな設定なくしてしまえばいいのに、という気もするのだが。それが4点つけられなかった理由。

あとは’某映画’への類似に関しては、比較的早くから気付きはしたものの、個人的には特に気にならなかった。アイディアが斬新かどうかということよりも、そのアイディアが話の中でどう生きてくるかが、結局評価の分かれ目だと思うし。そういった点ではコチラの方が上だと思う。ネタばらしをした後で残るもの(「愛」という目に見えないけどリアルなもの)が、コチラのほうが大きい。つーか、「驚愕のラスト」ってのにはもうスッカリ慣らされました(笑)。

余談: ちなみに映画のなかでは「死んでるからまた会えるよね」みたいなことを言われてたけど、夫はただ単に戦争で重症を負い、生死の境を彷徨ってあちら側の世界に片足を踏み入れてしまっただけだと思ってたんですが。彼の「前線に戻らねば」とは、つまりは意識を回復して戦争の渦中に戻るということだと思ったんですが、違うのだろうか・・・。

(評価:★3)

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