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[コメント] 博奕打ち 総長賭博(1968/日)

所詮部外者には理解し難い社会のしがらみ。にも関わらず徹底的にスキなく構築することで、有無を言わせぬ説得力を持たせてしまう。これはもう、ひとつの美学。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「何故仙波が黒幕だと松田に教えてやらないのか?」なんてことを始めとして、普通に考えると不可解と思えるようなことも、渡世の仁義という筋道に沿って間然とすることなく物語が構築されているので、もはや文句のつけようがない。

任侠道の中でしか生きることができない人間たちの辿った悲劇は、「やくざ」というある意味一般社会とは相容れない特殊な社会が、その中に政治という部外者が介入することで、本来の価値観が崩壊せざるを得なくなっていく姿を背景にしている。結局任侠道の中では「仁義を通す」という美学に裏打ちされた行動も、その背景が崩壊すればただの人殺し稼業になり下がってしまう。ラストの「ケチな人殺し」というセリフは、主人公の辿った悲劇の末路でもあり、背景の「任侠道」の一つの時代の終焉を告げる言葉ともとれる。

それにしても印象深いシーンが多い。ことに雨のシーンの素晴らしさに、日本映画の美質をあらためて見る思い。[4.5]

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (9 人)TOMIMORI[*] Myurakz[*] sawa:38[*] ハム[*] G31[*] 町田[*] 若尾好き ゑぎ[*] けにろん[*]

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