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[コメント] 僕のスウィング(2002/仏=日)

別に美談にもならないし、純粋無垢でもない。「生活に根差した音楽」は、キレイごとでは済まない様々なモノが混じり合った、「本当のもの」からしか出来ていない音楽。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







数々の打算とか、契約とか、ニセモノとか。案外世界なんて、表面はそんなモノで出来ているのかもしれない。でも、それだけでは生きていけない。失望や諦念だけでは清算しきれない何かが、澱のように腹の底に沈む。そんな感情や想いのわだかまりが飽和の量を越える時。表面の殻を突き破って、血や涙を滲ませながら、音楽が産声をあげる。きっとそれがロマの人たちの音楽。

ミラルドの最期。生死の境を越えてはじめて、どこへでも行ける翼を身につけ、やっと大好きな旅に出られたかのようだ。ロマの人たちにとっての音楽も、そんな翼のようなモノなのかもしれない。その雑然とした音色の中には、どこか遠くを見ているような憧れの音色も、かすかに聴こえる気がするから。

様々な枷に縛り付けられながらも、どんな枷でも縛ることができない「何か」を確認するかのように、今日も彼らの音楽が止むことはない。

(2005/12/11)

(評価:★4)

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