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[コメント] チェチェンへ アレクサンドラの旅(2007/露=仏)

ソクーロフ、この映画は、いつもの高踏的な、いわんや神のまなざしがごとく滑らかにカメラが俯瞰する位置取りの映像ではなくなっている。カメラも登場人物に正対しえらくオーソドックスである。ドキュメンタリータッチを意識しているのだろうか、、。
セント

**ネタバレ注意**
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チェチェンの激戦地に祖母が孫を訪ねる話である。野外テントの駐屯地はあっても戦闘シーンは皆無だ。時間のかかる列車に兵士と一緒に乗り込む祖母。若き兵士の顔はどの顔も孫と同一に見える。一人一人写していくカメラ。祖母のまなざしが乗り移っている。

駐屯地でふらふら祖母が歩いている。何か場違いのような(文字どうり)感じがする。映画的作為かなとも思ったが、そうでもなさそうで実際は若い兵士を尋ねる家族たちがかなりいたそうだ。

そして職業軍人である孫と話し、血の関係だけで孫を案じ「君死にたまうことなかれ」と願う。戦争の原因、状況等この映画で全く触れられることはない。何か昔の名画「誓いの休暇」を思い起こさせるものもあるが、じんわり来る反戦映画でもない。ヒューマン映画でもない。孫を心配しながらも祖母は家路へ戻っていく。それだけの淡々とした話だ。

途中チェチェン人の若者が祖母に口を聞かないシーンもある。恐らく家族または恋人がこの戦闘で亡くなっているのだろう。青年の顔の表情で被害者としての状況を表している。さりげなくうまい映像だ。

一方チェチェン人でも同年輩の老夫人たちからは慕われる。でも、ここが何か作りものに見えてしまったが、、。

冒頭に書いたがこの映画ではかなりソクーロフはナチュラルな映画作りをしているように思える。今までの芸術風作家映画から距離を置いているように思える。これも彼の映画作りからは新たな挑戦と取る。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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