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[コメント] チェイサー(2008/韓国)

最初見始めたときからキム・ユンソクソン・ガンホの役どころを演じていることに気づく。顔も似ていないことはない。全体にガンホを意識しているかのような演技だ。そのうちに気がつかなくなるが、、。
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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一方、対する敵はギドク映画の常連ハ・ジョンウだ。彼が演じると不思議なことにこんな厭な役なのに憎しみが湧いてこない。(僕だけかな?) 映画全体のトーンも、ただの猟奇的殺人事件とは思えない作り込みで、2時間強、圧倒されっぱなしだ。面白い。強く惹かれるものを感じてしまう。

韓国映画で、相変わらず警察の無能振りを性懲りなく基本濁流に据えているナ・ホンジンのしたたかさは正しい。(いくら『殺人の追憶』の亜流だと言われようとも)  そのことは、ラスト近くソ・ヨンヒがやっと逃げおおせたのに、SOS先が、よりによって「一番行ってはいけない場所」に行ってしまったこと、の伏線になっている。

世の中にこんなについていない女がいるのか、と僕は神の不在と共に超アンラッキーな女を映画で確認したわけであるが、世の中にはついていない人間というのは掃いて捨てるほど存在するのである。そう、みんな自分はそんなことはないといっているが、明日はわが身なのだ。だから事件、事故が起こっている。

キム・ユンソクはある意味、普通一般の、というより観客の代行目線の人であろうが、悪の権現ハ・ジョンウはそれでは一体全体どんな人間なんだろう。女が猛烈に好きなのに、インポでものが役立たない男。女の頭ををノミでつきまくるときに初めて性的欲望を感じる男。それらがエスカレートしている、もはや人間ではなくなっている狂人という描かれ方である。

そんな男も宗教(キリスト教)に救いを求めていた時があったのだ。だが、今や当時の信者でさえ平気で殺戮する(ノミではない凶器で)男に成り果てている。宗教が人間への救いに全く寄与していないことを表わしていた怖い壁画のシーンを思い出す。彼が、通常のただの殺戮者でないことから、逆に底知れない恐怖が僕たちを襲ってくる。

いやあ、2時間強、圧倒されました。ものすごい迫力でした。エンターテイメントとしても優れているので、少々厄介な映画ですね。こんな映画が好きだと、変に思われないでしょうか、と少々心配しちゃいます。それにしてもこの映画がデビュー作とはネエ、韓国映画まだまだ末恐ろしいですなあ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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