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[コメント] イングロリアス・バスターズ(2009/米=独)

映画、映画。もうどこを見ても映画。映画の中にある映画と言ってもいいほど映画に対するオマージュが感じられる映画だ。それでいて映画的抑制があり、美学がある。このタランティーノの大人への変身ぶりはいかがしたものか、、。
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







全体を5章に区分けし、長丁場にアクセントをつける。これで観客は4回一息つける。その計算の冷徹さ。

第1章で、サスペンス。観客を全員画面に引き付ける。悪から解放されとにかく全力疾走するメラニー・ロランの姿は世界中のすべての戦争被害者の代表だ。かくて我らも彼女の体を借りて征服者・ナチスに復讐することになる。

パリの街角。とある映画館。『ニュー・シネマ・パラダイス』とそっくりの設定。さて、やはり映写機が主役に変わる。そして火事。うまい。うますぎます。でもただの模倣じゃない。メラニー・ロラン、死しても、炎の映画館と化した銀幕は炎に包まれながらヒットラーを筆頭とする悪に呪詛そのような言葉を浴びせ 睨みつけている。その壮絶さ。悪に勝利した瞬間。我々との共感。

完成度が高いので驚くとともに、しかし彼がいつも発しているうごめくような迫力は感じない。画面は常に安定している。揺れない。映像はとびきり美しい。映画を志す以上1本はこういう映画を撮りたかったのかなあ。

ただ1点だけ、突っ込ませていただくと、あの、プレミアショーで無防備に3人程度で侵入することはあまりに幼稚な戦法で、ブラッド・ピットが捕まる説得力に欠けている。 まあ、たいして減点にはならないけれど、、。

クリストフ・ヴァルツの悪魔のような演技も特筆ものだが、メラニー・ロランの美しさは際立っており、大物女優の出現を予感させる。

とにかく驚きました。タランティーノ自身も恐らくこのように観客を驚かせたかったのだろうと推測できるので、そういう意味では僕は彼の策略に見事はまってしまったことになる。

(評価:★5)

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