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[コメント] カラフル(2010/日)

絵がきれいだ。特に玉電とか激安スニーカーショップを巡る東京の小トリップの色使いがみずみずしく、魅せられた。身近な町にもいろんな色があるんだなあと、まさに題名通り感銘いたしました。
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







こういう死後に到る審問所の話は興味あるし、面白い。アニメだからこそリアルでもある。そして話は全く知らない中学生の身体に棲み込んでしまう魂の話だ。6か月の命。さてどう生きてゆくのか、、。

と、設定はとてもワクワクするほどだ。誰でも親近感を持ってしまうテーマだ。でも、不思議なことに全く知らない中学生という前提なのに、家にいても学校にいても、別人だと思われないことだ(一人を除いて)。通常のドラマだと、この部分だけで時間をかけることになろう。成り済まし人間、大成功ってわけだ。

父親の頼りなさ。誠実だけが取り柄っていうだけで、何故妻が不倫を働くのかよく分からなかったが、主人公は徹底的に母親を無視する。他人がなぜそこまで気になるのか、かなり違和感もある。観客も母親の不倫理由が分からないから、ただ唖然と見ているしかない。

そのうち、級友が一人だけ偶然に出来る。恐らく砂漠のような心でいた中学生にやっと水分が沁み込んだような、大切な気持ち。この部分はきれいなスケッチ風の絵と共に観客に共有感を持たせてくれる。唯一すがすがしくなるシーンである。

そして家族みんなの優しさを全身で受け止めることのできるラストへと僕たちは運ばれる。僕はここで、大泣きしてしてしまった。満席近くの座席で周囲に分からないように号泣するって難しいんですよね。ほとんどみんな泣いていないもんだから、少々恥ずかしくなりました。

でも、その後の天国からの使徒の思いがけない回答はちょっとどうなのかと、、。

まあ、それまでの疑問はこれで解決された気もするが、でも腑におちない。6か月という時間設定で、この中学生は死ぬはずなのだ。観客もそれを知っていて、それがずっと頭を離れないはずなのだ。そのことに関する悩み、哀しみ、苦悩そういうものが絶対あるはずだ。

だが、映画は見事それらをチャラにしてしまう。あまりにあっけらかんでどうもこのハッピーエンドには素直に承服できない自分が存在する。敢えて言えば、自分の魂が自分の体に戻るなんて、考えたら当たり前すぎる。観客にはそうではない、と冒頭では見せかけておいて、やはりそうなんですよ、と言われても納得はしない、気はする。

とまあ、ブツブツ書きましたが、アニメでここまで繊細な少年たちの心の動きをみずみずしく描き切っているのは事実です。何しろアニメでこういう題材を映画化したというのも、僕には嬉しい限りです。忘れられない映画になろうと思います。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)水那岐[*] 4分33秒[*]

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