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[コメント] 人生はビギナーズ(2010/米)

長く埋もれていたDVD、このたびやっと見ました。実にじわっと来る秀作でした。父親が75歳でカミングアウト、というのが通常からは衝撃の事実なんですが、それ以降彼は人生を取り戻したかのように楽しんでる、、。
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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何か、すっきりしないんだよね。主人公の息子と同じように、それじゃあ、あの云十年の結婚生活は何だったの?結婚生活で生まれ出た息子は一体全体何だったの?母親の気持ちは一体どうだったんだろう、とか疑念が僕の脳裏を渦巻いている。

それは息子も全く同じで、彼は少年時代の母親と父親をうっすら思い出す。どう考えても幸せとはいえない母親だけれどそれなりに家庭を切り盛りしている。でも気持を持たせることができず不安定な行動に出ることが多い。

そんな家庭に育った息子は今でも恋人さえしっかりとつなぎとめることができないでいる。好きなんだけれど別れが怖いからその前に別れてしまう、、。現代のアメリカ人にもこういう繊細な人がいるんだとちょっと僕は驚いたけれど、この映画はそんな微妙なタッチを2時間の映像にしている。

この映画は映像で描いた私小説の雰囲気を持っているなあ。カミングアウトがどうってことないなんて思えてしまう僕ではないが、それでも父親や母親にあれほど深く影響を受けてしまう子供という存在にも実は僕は驚いてしまう。

自分は自分、と両親のことをあまり考えないまま生きてきた僕にとっては彼の繊細さはあまりに文学的だ。優しすぎる。人間を見る目が柔らかすぎる。きっといいひとなんだろうなあ、と思う。

でも、いけないんだけれど、やはりカミングアウト後の父親の行動は名優クリストファー・プラマーが演じていても少々キモい。彼の恋人のゴラン・ヴィスニッチもちょっとデブ目で怖い。

映画では、ゲイは精神病で治るのだ、と。母親も私の力で治して見せると言って結婚したのだ、と。ということは父親は少なくとも母親には結婚以前にカミングアウトしていたことになる。やはり時代性も感じてしまうね。

ラストのエンドクレジットに通常のENDはない。その代わりにBEGINNERSという文字が。なかなか粋な映画だね。秀作です。

(評価:★4)

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