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[コメント] 箱入り息子の恋(2013/日)

彼女いない歴35年なんて結構今の世の中わんさいるのではないかと思われる現代において、究極の恋愛映画を見た。カメラワークがりりしく、繊細でしかも美しく構図も決まっている。そして展開はコメディ調でありながら、これがなかなか深みがあり実にいい。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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35歳なんて董が立っているとも思えるけど今どきの若者、結構永遠青年(少年)なんて僕の周りにもざらにいる。だいたいカネもクルマも保持しておらず、外食もせず、酒も飲まず、ましてや女の子と会話もしない男っていうのは、、と反発するわけではないが、いわゆるオタクそのものである彼らは人に迷惑をかけているわけではないのである。本人たちはひっそりと生きているつもりなんだろうが、その存在そのものが目立っているとも言えよう。

この作品の主人公健太郎はその若さでもう老後のことを考えている。恐らく結婚なんかには無縁だろうと、貯金をし、老後の資金をせっせと貯めているのである。なんとけなげな若者であろうか、僕はこのことに実に早々と感動してしまった。

これを可哀想なんて思うことは思い上がり以外の何物でもない。実に立派な彼一流の人生設計である。素晴らしいとさえ思う。

けれでも彼の脳裏では頑強だったその人生設計も、ある雨の日にひとり立ち尽くす実にけなげな女性を見たことから狂い出す。声を交わさずともその人を理解しようとする、あるいは理解できるその心根、それはお互いに気持ちがフラットでなければ成り得ないことなのであろう。

映像で綴られる二人の純な心のときめき。そして人を愛することを初めて知るそのどよめき、恍惚、、。

まさにこれぞ究極の恋愛映画であります。二人だけの世界であります。その世界を壊す権利は誰にもない。

うーん、云十年前、僕もこういうひと時を持ったこともあったかなあ、、。懐かしさと悲しさと喜びと、何か解らないそれらの混ざった不思議な気持ちが映像を眺めながら沸々と湧いてくる。ある意味この至福感。

吉野家の牛丼での初逢引と、それから別離(本当は真実の愛)を確認する同じく吉野家のカウンターシーンの叙情的なこと。実に美しい。本当に美しい。男と女が相手を必要として求める姿は実に美しい。これを涙なくして見ることができようか、、。

本年屈指の恋愛映画だ。この映画に出会えたことに感謝します。ほんと、こんなオジンでも久しぶりに清々しい気持ちになりました。

(評価:★5)

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