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[コメント] 逃げた女(2020/韓国)

お気に入りのホン・サンスの新作だ。何気なくただ映像だけを見ていると、普通の、夫の出張中に3人の友人を訪ねるロードムービーになってしまう。何か不思議な映画だけどこれがベルリンの監督賞?と思ってしまう人もいるに違いない。
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







けれど僕はたんとサンスの映画を見てきた。この何気ない会話劇に仕組まれたサンスの思惑とは何か!それはミステリー的であります。

第1話。男性にも見える女性と同居している先輩。女友達は離婚して今や郊外に住み、好き勝手に生活している。夫といる間は1分でも厭で仕方なかったが、今は自由を満喫していると言う。そして、隣人の男から猫のクレームが来る。両方折れない。

この隣人は後ろ向きだ。顔は見えない。同居の女性も肉を焼いている間は後ろ姿。僕は男かな、と思った。この映画では女だけが顔を見せる。

とこういう風にガミが3人の女を訪ねていく。なぜ彼女は大した用事もないのにわざわざ旅をするのか?夫とは5年間、一日たりとも離れたことがなかった言う。それを3人に言うものだから、これはてっきり虚言だと即思う。

2人目の女友達は一回だけ男と関係を持ったら、執拗に男から追いかけられ困っている。その男も後ろ姿のみで出現する。

3人目の女友達と会うときには、その夫との関係もありそうである。まさにその男と会うために女友達を訪ねたようでもある。この夫も後ろ姿しか見せない。

そう、この映画では男はみんな後ろ姿ばかり。登場人物からは見えているのに、観客からは見えなくしている。これはなにを意味するのか?

男不在と言えるが、そこにはガミの男への虚無感が介在している。ラストは小さな映画館で見る映像で終わる。それは海だ。波立った海がクールベの絵のようだ。恐らくガミは人生に倦怠感を持っている。何かから逃げようとしている、、。まだ逃げてはいない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] 袋のうさぎ

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