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[コメント] 偶然と想像(2021/日)

これは面白い。キェシロフスキにも「偶然」というすごく似たテーマの映画もあったけど、こちらは3編それぞれ複雑に込み入ってる。観客を意識した映画づくりに濱口の素朴なサービス精神さえ感じる。
セント

**ネタバレ注意**
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第一話。 タクシー内での、女性同士の饒舌なノロケ話から一転、逆方向へとタクシーを変換し、単なるノロケでなくなる男女3人の泥沼愛憎劇へと変質する映画的ダイナミズム。カメラが素晴らしい。眼を見張る。映画的高揚感。

第二話。 どんな状況になっても表情を変えない大学教授と、セフレの話に乗り教授を追い詰める主婦学生との、開け放された部屋ではあるが、二人にとっては密室化された空間を共有してしまったがために、思わぬスキャンダルに巻き込まれる二人。芥川受賞作を女が朗読するエロ的空間は絶品。小説部分の文学的構成も優れている。濱口、かなりインテリだね。

第三話。 これぞ、題名の「偶然と想像」を最も表出した秀作だ。「お互いにあなたは誰?、そもそも私とは誰なのか?」 人間とは自分でない他人をいつでも演じることができる、、。この手の作品では勅使河原宏の「他人の顔」、さらにアラン・レネの「去年マリエンバートで」らしさもある。実に人間の奥底に潜む内面を凝視した秀作だ。

3作とも俳優陣が秀逸。彼らの演技を見るだけでもとても楽しい。変に難しくなく、映画の楽しさまで感じ取れる傑作!

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)おーい粗茶[*]

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