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[コメント] キルショット(2008/米)

"Real life? What the fuck is that."人生がカラッポの暗殺者と、頭がカラッポの弟分と、愛がカラッポの夫婦。二重、三重の愛憎劇。
Lostie

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







エルモア・レナード原作の現代劇としては『ジャッキー・ブラウン』、『アウト・オブ・サイト』以来の良作。とにかく映像と音楽が素晴らしい。寄り過ぎず、引き過ぎず、遊び過ぎず、固過ぎずで、絶妙なバランス感覚。こういう映画は意外と貴重だ。

実は原作読んだことないのでどの程度改変されているのかは分からないのだが、ネイティヴ・アメリカンの暗殺者にミッキー・ロークというキャスティングは完璧だったし、弟分のジョセフ・ゴードン・レヴィットロークに負けず劣らずの面構えで、何度観ても飽きない二人組だ。ただ、そのレヴィット演じるリッチーのキャラクターの掘り下げ方はちょっと中途半端だったかもしれない。ドナ(ロザリオ・ドーソン)あたりとのエピソードがもうひとつかふたつあっても良かった気がする。まあしっかり掘り下げたら掘り下げたでこの映画の一番のキモである「カラッポ(虚無)感」が失われたのかもしれんし、ほとんど掘り下げずに『ノーカントリー』のシガー(ハビエル・バルデム)の境地を目指すってのもどうかって感じだし・・・、う〜ん、難しいところだ。

オープニングのタイトル・バックは文句無し。ジャリジャリと鳴るロック("Monkey" by Low)。窓ガラスを突き破るゴミバケツ。ドーンとデッカく『KILLSHOT』。最高にダサくてカッコ良いタイトル・バック。

他にもたくさんの美点がある。見捨てられそうになったリッチーが「バーーーーード!」と叫ぶ直前の道路の(太陽の光を反射した)白さ。コンビニでの強襲シーンで弾切れになりショットガンをガチャガチャやるリッチー。終盤の『ファニーゲーム』並みのドSっぷり(ダイアン・レインの背中に乗る雄ジカ誘引剤!)など。

映画はバード(ミッキー・ローク)の死によって幕を引くわけだが、その時の音楽が禍々しくて印象的(『ディパーテッド』のラストを想起させる)。ラスト、俯瞰視点のカメラは抱き合う夫婦とうつぶせに倒れた暗殺者を映し出す。そこには夫婦と暗殺者を引き裂くように木が影を落としていた。暗殺者はその木の影に止まった「黒い鳥」のようにも見えた。

あと映画そのものの出来とは関係ないが、字幕が微妙だった。本人が「フレンドリー・インディアン」言うとるのにわざわざ「ネイティブ・アメリカン」と訳すこともあるまい。最近はそんなに表現に厳しいのか? 自主規制だとしたらくだらないぞ。

(評価:★4)

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