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[コメント] E.T.(1982/米)

こういうストーリーにつきもの(だと自分では思ってる)の「無理解な大人」が出てこないので、何の感情の高まりもなくマッタリと終わってしまう不思議な無感動映画。
ジョー・チップ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







どうも、もっといくらでもエグい内容になる話を、うまいこと避けて口当たりのいいエピソードばかり並べているのではないか?エグい内容というのはつまり「迫害」である。子供たちはETが大人たちに見つかれば、むちゃくちゃな迫害に遭うだろう、と予測している。そのことは彼ら子供たちが、ある意味大人たちから上から押さえつけられて生きている経験上、容易に感じ取ったであろう。その上兄や年長の生徒からイジメの対象になっているらしいエリオットはなおさらである(もっといえばスピルバーグ自身の心情でもある)。                                                       しかし、子供達とETの交流は描かれるものの、ETが危険に晒されている、という感覚は全くといっていいほど描かれない。鍵をジャラジャラいわせるナゾの男達は最初から凶悪なイメージはない。あれだけハデに宇宙船が離着陸すれば、街のうわさになっていそうだが、町民はなにも知らないらしい。ここはいかにも粗暴な太っちょのおっさんがライフルでも持って来て「火星人が来たらこれで仕留めてやらあ」とかエリオットの前で息巻いてほしい。                                                        あの悪名高い(?)川原でETがぶっ倒れているシーンで、大人たちがETを見つけ「なんだこりゃ〜」とか言って持っていてしまうという展開を期待してたら、何と都合よくエリオット兄が見つけちゃうし。                                                         で、とうとうETの存在がママにばれて、ママびっくり。その反応は嫌悪感と恐怖そのものだったので、これはいよいよ無理解な大人たちが「ETを殺せ〜」とか騒ぎ出すのかと思ったら、もういきなり例の男達の急襲(?)で事無きを得、しかもその政府関係者は実はイイ人たちだった・・・となるともうとれは確信犯だな、と。いやなのもは描きたくないのか・・・                                                           ああいう展開になるのは無理もない設定であると言える。このなんとも殺伐とした環境に造成された新興住宅地(緑は少ないわ、娯楽施設はなさそうだわ、あまり住みたくなるような所ではない)ではかつての共同体意識はなく、隣人がどんな人間だか分からないという、お互いが孤立したよそよそしい関係しかないこと、想像に難くない。ましてやエリオットの家庭には父親はいない。エリオットの周囲は迫害する大人のいる環境ではないのだが、彼らに関心を持ってくれる人々もいない。まったく内向き「自分たちだけ」の世界なのだ。そこに、いかにも保護者的な役割を持った科学者たちが、この家をまるごとビニールの幕で包んでしまうというのが象徴的だ。                                                                      この後、子供達がETを奪って、このビニール幕を破って逃走するという展開がこの映画の唯一のエイキサイテイングにして主人公が外部に対して自己主張するシーンだが、その対する大人たちというのが別に子ともたちと対立しているわけではない(だって保護が目的だからねえ、彼らだってETを返したかったのでは?)。あの通信装置を見ればスパイ行為と判断されてもしょうがないと思うのだが、誰も武装してないし(というか今回の改訂版で銃をレシーバーにしちゃってるよ)。                                         まあ、いい話なんでしょうけど、ETを巡る対立がないのでドラマがしまらないし、主人公にとっても対立を克服して成長したという経過もないし(この事件を通してエリオットは何かを得たのだろうか?)いや、そこが良いところなんだよ、と言われれば何も言えないんだが。僕にとってはこの映画の明かなパクリである『アイアン・ジャイアント』の方が感動したっていうのが正直なところなんだな。                                                                                                                                                     

(評価:★3)

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