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[コメント] 八つ墓村(1977/日)

「物的証拠は?」と問われて、「いやそれよりも重要なことがあるんです」って・・・金田一さんの立場は探偵というより、『妖怪ハンター』(by諸星大二郎)に近い。正直言って、影丸穣也による劇画のほうが面白い。
ジョー・チップ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







本当にたたりがあったと言わんばかりのクライマックスには唖然とさせられる。なぜならほとんどの人々はたたりなんてない、と思っているからだ。それを万人に信じさせるには、膨大な想像力とそれを構築する表現力というエネルギーを必要とする。最後の最後でそれを納得させようというのは無謀というものだ。

横溝正史の金田一ものというのは、前近代的な風土の土地でおどろおどろしい事件が起こり皆が震え上がるのを、アメリカ帰りのモダニスト、金田一探偵がフラっとやってきて「皆さん、たたりなんて無かったんですよ。」と事件を論理で明快に切ってみせるという話なのだと思う。それゆえ最後に残るのは、やはり一番恐ろしく理解し難いのは人間の心、という結論であり、そこに引き付けられるのであろう。

しかしこの映画はその前提をあっさり覆している。たたりはあったらしい。しかしそうなると、映画は「なんでもあり」の状態になってしまい、人は何に依拠して感動していいのか戸惑ってしまう。簡単に言えば、前世の因縁を認めたら、今生きている人間の行為はどうでもいい、という結論になりかねない。この映画の結末の白けた感じはその辺にあるのだろう。構想3年というロケ地もあんまり美しくなく、がっかりである。

この映画からそろそろ橋本忍氏は危ない領域に足を踏み出している。

(評価:★2)

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