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[コメント] 日本沈没(1973/日)

「東京の人口は、キミィ!」「門を開けてください!」「なにもせんほうが いい?」「問題の本質は、キミィ!1億一千万の人間の数だよ!」「10万がだめなら1万でもいい!1万がだめなら千人でもいい!いやひとりだっていい!」スーパー総理丹波哲郎が大噴火。
ジョー・チップ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







公開当時もこんな立派な総理がいるか!と批判があったが、だったら育てればいいじゃん、と思ったものだ。わたしは一国の指導者の責任というものを考えさせられました。                                                                      そもそも原作がそうなのだが、あまりにも政府主導で、一般庶民の顔が全くといっていいくらい見えないのはどうかと思うが、そうすると上映時間がどんどん肥大していくのでまあ、仕方がないかと。民間代表を藤岡弘いしだあゆみに絞ったのは正解であろう。この二人がほとんどお見合い同然で知り合って、「タイタニック」のような熱愛でもなんでもないのはいかにも日本的(当時)と言おうか、今ではこれでは通用しないだろう。藤岡は日本を脱出する段になって「君を本当に愛しているのか、分からない。」と正直に言う。だが、いしだが行方不明になったら一転して必死で沈み行く日本を駈けずり回る。愛がどうこうではなく、もっと根源的な人間同志の絆のように感じられる。このような大混乱があれば家族も恋人も離れ離れになる可能性が大きいことは、中国残留孤児の事例を見ても分かる通りである。                                                                       また、現実感があるのは、海外の反応が一様に冷たいということだ。オーストラリアなど露骨に迷惑そうな顔をしていて面白い。国連では、どこぞの博士が糸井川構造線がなかなか崩壊しないことを指摘して「地球の営みにはまだまだ理解できないことがあるんですね〜」などと感心していたりする。もう完全に他人事なのだ。                                      これらのやや冷酷な描写は、当時まだ戦争体験者が多く健在で、過去の体験からなかば容易に推測できたことだったと思う。                                                       特撮であるが、これがちょっと・・・規模の大きさに特撮がついて行けないことがストーリーが進んでいくうちに分かってしまうのが哀しい。したがって,一番良かった特撮はサスペンス感ある「わだつみ」で深海を探査するシーンということになる。次の東京大地震は一生懸命がんばってるのは分かるが、前にも指摘した通り大局的な視点なので感情移入すべき人間が存在せず、恐怖感がない。また東京のどこが崩壊しているのかわからん(意識的に描いたのは皇居の門であるがここが一番のみどころ)。また描写が説明的なのが気になる。地震だというのに「前の震災でも被服廠広場で・・・」なんてウンチクをいうおっさんがいるか?石油ストーブには気をつけろとか、いきなり外へ飛び出すとガラス破片が落ちてきますよとか・・・ちょっと違うんじゃないかと思いますね。                                                                                            大地震の描写に精力を使ってしまって、肝心の沈没シーンがえらくアッサリしているのも不満だ。ここでもどこが沈没しているのか?よく分からない。ここは原作にある避難民を乗せた旅客機が離陸直前に大地震に見舞われるというスペクタクルシーンを映像化して欲しかった。                                                            さらに脱力するのが人工衛星軌道から見た日本列島からパイプのけむりみたいなのがポコポコ噴出しているシーン。ラッシュをみて誰もおかしいと思わなかったのだろうか?というか撮影段階でわかりそうなものだが・・・技術うんぬんではなく想像力の欠如を感ずる。ゴジラシリーズも終わり、TVでもウルトラシリーズも一段落ついてしまい、迷走していたこのころの東宝特撮陣の実力を如実に示してしまったシーンといえよう。                                                                  とはいえ、全体的に見れば、悪い映画ではない。無駄の無い描写でうまくまとめており、やはり橋本忍の脚本の功績が大きいと思う。自衛隊が全面協力してるのに平然と「偵察機や戦闘機は何のためにあるんだ?」と言わせたり、原作にないセリフが面白い。また、丹波哲郎小林桂樹などのオーバーアクトやカタストロフ描写にもかかわらず、見終わったあとの印象は暗く、静かなイメージがあるという抑制された演出も特筆すべき。

(評価:★4)

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